アネモネの咲く頃に | ナノ


  21


「それでねっ!リヴァイのやつがっ…!」
「さっきから何回も聞いたよ。うるせぇって言われたんでしょ?」
「その上パシッって手まで振り払ってきたんだよ!ほんとに腹立つ!」
「まぁまぁ名前落ち着いて。それも何回も聞いたから。」


リヴァイとの腹立たしい一件の後、私は研究に勤しむハンジを捕まえて愚痴を聞いてもらっていた。ハンジは私の話を聞くと背中を撫でてなだめてくれたけど、これが落ち着いていられる訳がない。だっていきなりあんな態度を取るなんてリヴァイのことが全然理解できないんだもん。


「何か理由があったんじゃないの?理由もなしにそんな事しないと思うけどなぁ。」
「それは私も思うけど…。でも、その肝心な理由が見当たらないの。リヴァイがエルヴィンの部屋に入って来た時だって、私はただエルヴィンと話をしてただけだったし。」


病院に居る時のリヴァイの態度はいつも通りだった。本部に帰って来てからはさっきまで顔を合わせてなかったし…。この短時間で自分がリヴァイの機嫌を著しく損ねてしまうことをしてしまったとは考えにくい。


(もう一体何なのよ!)


「エルヴィンと話してたってどんな感じで話してたの?」
「え?別に普通だよ。ちょうどエルヴィンが私の頭を撫でてくれてた時だったけど。」
「それが原因なんじゃない?」
「どうしてそんなことでリヴァイが怒るのよ。」


ハンジの言っていることがよく分からない。リヴァイはエルヴィンにかなり忠誠的だから、エルヴィンが私の頭を撫でてたことが気に食わなかったのかな?それなら自分も撫でてもらったら良いじゃない…。どっちにしてもそんな事で怒るなんて子供だと思うけど。


「だってリヴァイは名前のこと…。」
「私が何?」
「いや何でもない!ところで名前、今夜は名前の退院祝いとリヴァイの兵士長就任を祝って酒場に行こうってミケと言ってるんだ。」
「えー?今日!?」


お祝いをしてくれるのはもちろん嬉しいけど、よりによって今日とは…。リヴァイと顔を合わすのが気まずい、気まず過ぎる。


「エルヴィンが今日しか無理なんだって。」
「えっ?エルヴィンも来るの?珍しい。」
「そうだよ。仕事の都合でちょっと遅れるって言ってたけど。そういう事だから主役の2人が喧嘩中でもお祝いは今日するからね。」
「…うん。分かった。」


そうだ。私の退院祝いでもあるんだからリヴァイのことなんて放っておいて楽しく飲もう!病院の先生も多少の飲酒は大丈夫って言ってたし。それにエルヴィンと一緒にお酒を飲む機会なんてあんまりないんだから。



こうして参加を決めた飲み会だったけど、これが後にあんなことになるなんて、この時の私はまだ知らなかった。


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