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あっという間に時間が過ぎて、壁外調査の日はやって来た。
配置を決め終わった次の日から、長距離索敵陣形の展開訓練に忙しかったからだろうな。
私達調査兵団はトロスト区ウォールローゼ前で開門の合図を待っていた。団員達の間にいつもには無い緊張感が走る。私の班は「右翼索敵」危険も多い配置だけあって班員達の顔つきもいつもと違って不安そうだ。
「大丈夫?深呼吸しとこっか。あんなに練習もしたし、すぐ隣の索敵支援班はハンジの班だし私もみんなのこと守るから大丈夫だよ。」
「名前分隊長…。ありがとうございます!」
班員1人1人の背中をさすりながら声をかけると、みんな少し安心した顔を見せてくれた。新兵でなくても索敵班はやっぱり不安なんだろう。私自身も不安が無いと言うと嘘になるけど、分隊長としてそんな顔はみんなに見せられない。…だから、壁外調査の時は何があっても気丈に振舞わないといけない。
(リヴァイは大丈夫かな…?)
隣で馬に乗っているリヴァイの顔をちらっと盗み見ると、予想通り彼の表情はいつもと何ら変わりなかった。初めての壁外に恐怖は感じないのかな。
「リヴァイ、初めて壁外に出るのに怖くないの?」
「これぐらい何ともねぇ。」
顔色一つ変えずに言う彼は、やっぱり人間離れしていると思う。
「初めての壁外調査前にそんなに落ち着いてる人は初めて見た。」
「別に巨人なんぞ怖くねぇからな。」
「やっぱりリヴァイは凄いね。…でもリヴァイ、壁外で怖くなって漏らしちゃったりしても、私絶対に秘密にしとくからね。」
「あぁ?名前てめぇ削ぐぞ。」
リヴァイが凶悪な目つきで睨みつけてくる。でも、最近は彼のそんな顔を怖いと思うことも無くなっていた。
「冗談だって!もしもの話!」
「んなことある訳ねぇだろうが。」
「はいはい、ごめんなさい。」
今から壁外に出るのに何だか可笑しくなって笑えてきた。
「名前、何笑ってやがる。」
「別に何でもありませんー。」
「名前、リヴァイ、何楽しそうに話してるの!?巨人の話!?」
調査前で興奮したハンジまでやって来てしまった。いつもよりもテンションが高目なのが目に見えて分かる。
「巨人の話じゃないから!ハンジ配置に戻らなくていいの?もうすぐ開門だよ。」
「戻るよ、戻るけどさぁ…今回はどんな巨人に会えるのかなぁ!?生け捕りに成功なんてしたらもう嬉し過ぎてどうしよう!?」
「チッ…うるっせーな。」
「どうしようって言われても…。それよりハンジ、索敵支援よろしくね!頼りにしてるよ。」
「分かってるよ名前。私は巨人だけじゃなくてちゃんと支援の事も考えてるからね!」
ハンジの頭の中は100パーセント巨人の事でいっぱいだと思っていたけど、そうでも無かったらしい。索敵支援を放ったらかしにして巨人の生け捕りに熱中されたらどうしようと思ったけど、そんなことにはならなくて済みそうだ。
そんな事を考えていた時、突然大きな声が響き渡った。
『付近の巨人はあらかた遠ざけた!!開門30秒前!!』
いよいよだ。
辺りの緊張感がさらに高まり、私は班員達と顔を見合わせて頷いた。
『開門始め!!前進せよ!!』
その合図と同時に、私達は馬を勢いよく走らせた。