アネモネの咲く頃に | ナノ


  09


今日はハンジがずっとニヤニヤしながらこっち見ている気がする…。一体私が何をしたって言うんだろう。最近の出来事を振り返ってみても全く心当たりが無い。

いつも通り自分やリヴァイの訓練に、訓練兵団の子達の指導、思い悩んでいる部下達の相談相手と特に変わった事は何もしていない。全くもって普段通りのはず…。


それに加え、今朝の食堂での班員からのよく分からない言葉がずっと頭の中で巡っていた。


「名前分隊長!分隊長は俺の永遠の憧れです。どうか幸せになって下さい。それが俺の幸せにも繋がるんですから!」


キラキラした瞳でそう訴える彼のあの唐突な言葉は一体何だったんだろう。考えても考えてもよく分からない。…でも、今朝の班員との出来事とハンジのニヤついた顔はきっと関係している。100パーセント勘だけど…。


午後からハンジ、ミケ、私の3人でミケの部屋に集まって班の編成を考えていたけど、朝からの不可解な出来事が気になってなかなか集中できない。目の前に座っているハンジに直接聞いてみようかな。いや、聞いたら面倒くさいことになるだろうから止めておこうかと、私は悩んでいた。
でも、悩んだ末に我慢できなくなってやっぱりハンジに聞いてみることにした。


「ねえハンジ、私何かした?」
「どうしたの?いきなり。」
「今朝からずっとハンジが私をニヤついた顔で見てる気がする…。気持ち悪いんですけど。」


突然の私の問いかけに、ハンジだけでなくミケまで驚いた様な顔をしている。


「そうなのか?ハンジ。名前が気持ち悪がってるぞ。」
「ひどいなぁ名前は。せっかくそっとしとこうと思って黙ってたのに。…じゃあもうこの際だから聞くけどリヴァイと何かあったんでしょ!?ねぇ何があったの!?」


どうしてここでリヴァイの名前が出てくるのかは分からないけど、ハンジの謎解明スイッチを押してしまった事に激しく後悔した。こうなったら納得のいく答えを返すまでハンジはずっと興奮気味にしつこく聞いてくるだろうな。


(あぁ〜やっぱり面倒くさいことになっちゃったぁ。)


「何でリヴァイと何かあったと思ったの?別に何もないよ。」
「とぼけたって無駄だからね名前!私昨日見ちゃったんだから。名前とリヴァイが話をしてて、その後名前が真っ赤な顔して走り去る所を!ねぇ2人で何してたの!?」
「もうハンジうるさい!あの時は次の壁外調査のことを話してただけだから。もう。私の班員の子にも変な事言ったでしょ?」


真っ赤な顔して走り去るって…あの時、私はそんなに赤い顔をしていたのかな。確かにリヴァイに腕を掴まれてからは、顔まで熱かった気がするけど。


「じゃあ何であんなに顔が赤かったの?リヴァイとそういう関係なんじゃないの!?」
「違うから。夕陽のせいでそう見えたんじゃない?ちょうど日も傾きかけてたしね。ねぇ、ミケ?。」


ミケに話を振ろうと横を向いた時、思ったより近くにあった彼の顔に驚いた。

「なっ!?何してるのミケ!?」

ミケはそのままスンスンと私の臭いを嗅いで、初対面の時の様に鼻では笑わずに…


「前には無かった甘い匂いがする。恋でもしてるんじゃないか名前。」


と大真面目な顔で言ってきた。
すごく真剣な顔でそんなことを言うミケが可笑しくて、私もハンジも声を上げて笑った。


「ちょっとミケ笑わさないでっ!」
「凄いねミケー!ついに臭いで相手の心理状態まで分かる様になったんだね!」


こんな光景を見たらきっとエルヴィンは怒るかもしれない。大事な班の編成を決める最中に、大騒ぎしてるんだから。


でも私はこうやってみんなと笑い合うのが大好き。



どうか次の壁外調査が終わった後も、みんなで笑い合えますように…。




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