なんだかひどく温かくて









プレザ以降、誰とも特定の関係にならなかった自分が、選んだ相手はレイアだった。
彼女の後ろを付いていく。そのポジションが、いつしか定着しきっていた。
レイアが疲れきった時、救いを求める時、彼女の帰り着ける場所を、どうにか確保してあげたかった。
なんて、本当は、そんな言葉は只の建前でしかない。前に進み出すのが怖い自分を、連れていってくれるのが、彼女だったからだ。
自分が前に進まずに、彼女の後ろを歩いていれば、一緒に行こうよと、彼女は自分に手を差し延べてくれる。
自分は、その手を握り締めて、彼女の後をついていけばよかった。そうしていたかった。

足には鉛が付いていて動く事もままならないのだから。


動かすのが億劫でも、レイアの姿を見れば、近くに行きたくなり、意地でも足を動かした。
これでは犬みたいだ。
そうしたいと思うくらいに、自分はレイアに惚れ込んでいたのだ。
些細なやり取りを胸から取り出しては、その出来事にふけこんでいた。

怪我をすれば、舐めておけば治ると言っていても、レイアは、なんだか気まずそうな顔をしながら、そっと絆創膏を差し出してきた。



「傷口は塞がないとダメなんだから」

「なんで絆創膏?レイアちゃんの治癒術でいいじゃん」

「わたしの治癒術じゃ、治しきれないもん」



今思えば、自身の心の事を指していたのではないのだろうかと思った。
また、低体温な自分は、普通の人は微熱程度でも、自分にとっては高熱で、倒れそうなくらいフラフラになっていても、こんな無様な姿を見られたくないからと、見せないようにする。
とは言っても、声がガラガラであった為、風邪を引いていることは、周りにはバレバレであったが、熱があることだけは隠し通そうと思っていた。


「熱はあるの?」


レイアがそう聞いてきた時に、自分がとった行動に、アルヴィンは驚きを隠せなかった。


「ある。正直もう無理。しんどい」


彼女の前では、あっさりと白状し、辛さを苦しさを表面に出してしまった。


「どうしてみんなに言わないの?大事な事じゃない」

「たかが熱くらいで、ふらついてたら、大の大人の男としては、洒落になんねんだよ」

「じゃあ、どうして、わたしには話してくれたの?」



そりゃあ、こういうことを言ってしまえば、レイアがそう聞いてきても、何にもおかしいことはない。
レイアが傍にいるだけで、甘えたくなっていた。年上に甘えるのならわかるが、年下に甘えてしまうのは、どうなんだろう。でも、一番に心の中を温かくしてくれるのは、紛れもなく彼女だった。
こういう時に、この言葉を使うんだ。恋愛に歳の差は関係ないのだと。一度惚れてしまっては、もうどうしようもできない。


「おたくには知っててほしかった、レイアの前では安心しきって、気が抜けちまうんだ」

「まったくもう、しょうがないんだから」



自分が感じている思いを、レイアも感じていてくれていたら、嬉しいと思っていた。
自分の前では、安心しきっていてほしいし、頼ってほしいと望む。頼りないとは思われたくはない。そんなのはご法度だった。


だから、今度は、アルヴィンは、自分からレイアに手を差し延べて、散歩に行こうと連れ出した。
彼がレイアの手を引き、先へと進む。レイアはそれに付いていく。


「どこに行くの?」

「まあ、いいじゃねえか、どこでもさ」

「そうだね、アルヴィンと一緒なら、どこでもいいよ」






空気がどんなに冷たくても、二人の周りはとても温かかった。

この些細な幸せ。それも、とても、温かい。














 

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