twilight grow | ナノ
◎疾走アウトバーン、午前5時
紫原(天使)宅に来て3週間。薄暗い部屋に小さい明かりが灯っていた。
可笑しくなっちゃうんじゃないかと思ってしまう程に暗く、不健康なその一室。明かりは唯一電源を入れているテレビのものだった。
慣れてはいけない様だけど、3週間もこの部屋に篭もりっぱなしだったら嫌でも慣れてしまう。
最初の頃は物珍しそうに沢山の来客が来ていた様だが、2週半を過ぎた頃から段々と減っていった。
「へえ、バスケ好きなんだ」
テレビから流れるのはバスケの試合の実況。
ダム、ダムとボールを付く音が妙にリアルに聞こえた。
上半身を紫原君が座っているソファに乗り出し聞けば、あろう事か眉間に皺を寄せて「は?捻り潰すよ」と罵られる。
い、いや、そんな事で捻り潰されても・・・。
「テレビつけたら、たまたまあってたから見てるだけだし」
「でもバスケ強いんだね。賞状とかいっぱいあるよ」
「前世の俺だし、それ」
その言葉を聞いて、ちょっと深く干渉し過ぎちゃったかな、と謝る。
前世なんて言う人間は初めて見た。否、ヒトって言うより天使なんだけど。
天使というのは、前世で無気力自殺をした人が生まれ変わって天使になって人助けをするというものらしい。勿論、天使である紫原君も前世は酷かったと聞いたし、黄瀬君だって黒子くんだって前世にこころの病を抱えていた。
そんな彼等が今、
「どこ行くの?」
「どこ行くって、仕事だし。家に居てもつまんないから外出る」
「それって・・・、私も行けるかなあ?」
「・・・、いいんじゃない」
天使として生きる役目を与えられたという事は、とても素晴らしい事なんだと思って。
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