かたる




私は私立箱根学園一年、清野サクラだ。

我が箱根学園は通称ハコガクと呼ばれ、有名な自転車競技部は去年インターハイ優勝、スポーツに疎い私でも知っていたくらい有名な強豪校である。
特に今年は強者揃いだと聞く。何度か見たことがあったけど、お顔もけっこう端正な顔立ちらしく毎度練習風景に女の子がちらほら。

とはいっても、箱根学園の魅力は自転車だけではない。

校舎はとてもきれいで設備も整っており、何よりイベント事に力を入れているので毎日学校が楽しい。

私はそんな箱根学園に通って数日後、恋に落ちた。



「だからさ、馬鹿じゃないの?」

「なんて事言うんだ御越!ほんと愚かだな!これは私の純粋な恋心だよ!」

「どこがだよ」



私が恋に落ちたのは自転車競技部で隣の席の真波山岳くん。彼はちょっと、問題児というか、所謂遅刻魔というやつなのだ。そんな彼を毎朝学校に連れてくる係を任されたのは、私である。まあそれが恋の元凶になったわけだけど。

恋に落ちて数十秒後に告白し、見事に玉砕した私の恋。

まあやっちまったとは思ったよ。だけどちょっと時期が早すぎただけなんだ。どうせ告白はするんだし、フラれようがフラれまいが、時期がちょっと早かっただけの話。それはハンデにもくそにもならないね!



「私はあの一瞬で恋を思い知ったんだよ!初恋なのに、恋なんてしたことなくて分からないはずなのに!!これが恋なのかと!」

「だからってこう毎日好き好き言われても、あたしだって別に聞きたくないし、あっちだって迷惑だろーが!!」

「迷惑じゃないもーん照れてるだけだもーん」



私はあの時、自分に恋という電撃が走ったのが分かった。コイツだ。その時私は目の前のこの男と家庭を築き、子供たちと4人家族で幸せそうに笑っている将来の姿が、それはそれは明確に脳裏を過ったのだ。
コイツと結婚しなければならない。この男こそ、私の運命の人なのだと。



「いやいやふざけすぎ「いやあ、一目惚れって本当にあるんだね!」

「 聞 い ち ゃ い ね え 」



あの日から約一週間、最初は出会って数秒で告白とかまじかよ!ああもうこんなんじゃすぐ人をコロっと好きになる頭の軽いバカ女だと思われても仕方ないよ!!(尻が軽いの間違いである)
なんて落ち込んでもいたのだけど、(フラれたことはさほど気にしていないようだ)私と真波くんはどーせ結ばれる運命にあるのだから、今はゆっくりとアピールをしていけばいいのだ。



「なにがゆっくりとアピールよ。」

「さっきからうるさいよゆっちゃん。私はただ彼に振り向いてほしいだけなんだからね」

「ただ振り向いてほしいっていう普通の恋する乙女っていうんなら、乙女らしくしなさいよ。もっと普通の女の子らしく、影で密かに想ってたりしなさいよ」

「そんなじれったい!!!」

「押しだけの女はいつか飽きられるわよ」

「な…ん、だと…?」



私が今までに彼にどんだけアピールしてきたか。

私はもう既にフラれている身であるが故、もう減るもんもない。ダメ元で猛烈アタックしまくっているのだ。
今まで以上にかわいくなろうと外見に気を遣ったり、中身を磨いたり(結果はあまり変わっていない)、真波くんが学校に来ていなかったら迎えにいってあげたり(何故か上から)、真波くんに毎日好きといったり、お嫁さんにしてといったり!
真波くんの好きなもの、誕生日、足のサイズまで全て調査済み!

え?ストーカーみたいって?
ふふん、これが本来の恋する乙女の姿だろうが!!!

影から見る真波くんは、授業中とかぽけーっとしてて眠そうで周りに花が舞ってるけど、体育の時とかはとっても凛々しくて楽しそうにプレイしてて、汗がきらきら。爽やか少年なのだ。

もうほんとうにすきだ、だいすきだかっこいい!!!



「あ、サクラちゃんおはよーっ」

「真波くんっ!ああ今日もかっこいいね!おはよう!」

「相変わらず朝からテンション高いね〜」

「今日は朝からゆっちゃんに応援してもらったから。私と真波くんはやっぱり将来一緒になるべきだって!」

「いやいやそんな事誰が言ったよ」



横からスッパーンと上靴で頭を叩かれる。ちょ、手加減してよ愚か者め!これだからゆっちゃんは!!!




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