俺等のヒロインを紹介しますA




中盤からリョータの話が心底うざく思えてきたので、俺はリョータが過去の出来事に思いをはせてデレデレしているところをぶん殴ってやった。


それにしてもリョータは清野サクラに惚れてんのか?

あのリョータが?おいおい笑わせんなよ、どんだけだよその女。


「まっさかなー、モデルで顔だけは超一流のあいつがなー。くくっ、ますます興味湧いてきやがったぜ、清野サクラ!」


そして俺の横を通ったデカい浅黒い肌の男にも聞いてみることにした。



ああ?サクラ?あんなんゴリラだよゴリラ!
胸は無いし大雑把だし野郎みてえだし変なとこで熱くなるし胸無いし、本当あいつに出会ってからというもの、俺は少し女に失望してんだよ。
まあ、あいつの事は好きだけどな!尊敬してるとこもあるぜ?んな事言うとあいつが調子にのっから絶対いわねえけど。
あっ!そうそう、あいつああ見えてすっげえバスケ上手えの!あいつとの1on1は楽しくて仕方なかったなー!あー最近してねえな、今度無理やり連れてくか。





  (※ /aomine)





“大輝ー!ちょっとスーパーまで卵買ってきてくれなーい?”


テスト期間中で部活は停止。こんなに早く家に帰って来てもやってる面白いテレビなんてない。丁度録画も昨日ぜんぶ消化してしまった。

さてさて暇だ。だったら勉強しろよと俺の中の誰かが言う。
こんな俺にでも少しくらいは勉強しなければいけないという気持ちがあるようだ。本当に少し過ぎて何時も後回しにされてるが。

そして一階から響く母親の声。

二階での自分のベッドに寝っ転がって暇そうにボールと戯れていた俺に、断る理由なんてなくて俺は二つ返事で家を出るのだった。

そうだ、この時の俺はまだピュアだった!ピュア峰大輝だったのだ!!





「しっかし帰ってから何すっかなー」


正直俺の9割はバスケで出来ている(もちろん残りの1割はマイちゃんだ)。
そんな俺の日常は朝起きてだらだらと準備をし、バナナを片手に家をでる。俺の近所にはストバスコートがあって、10分位そこで遊んで、朝練に向かう。
朝練が終わったらバスケ部専用のシャワーを浴びて(たいそう豪華なもんだ)シャンプーの匂いを漂わせながら教室へ行く。そんなこんなで授業中は寝て過ごし、学食や弁当食べて昼休みはバスケか外で野球サッカー、それか普通に校内でぐだぐだ。放課後になって俺の本領発揮だ!いっきにテンションがあがってフルパワーで部活に励む。そりゃもう楽しくてしょうがねーよ!たまに居残りしてテツと練習するときもあっかな。黄瀬やテツたちと喋りながら帰って、各別れたら俺は近所のストバスコートでまたボールと戯れる。

そうやって俺の一日はバスケで始まりバスケで終わるのだ。


だけどそんな充実ハンパない俺の一日のリズムを壊そうとする奴等がいる。教師だ。奴等はテスト一週間前になると部活動停止期間を発令するのだ。
教師に許しを得たならば、部活動もさせてもらえるのだが、ここはいくら強豪帝光バスケ部でも無理らしい。そして俺は毎回赤点常連なのでなおさら無理らしい。

青峰!俺はお前がまさか二桁とれるなんて思ってもみなかった!勉強したんだな、先生感動したぞ青峰!!

俺が一回だけ奇跡的に12点をとった事があった。それだけでこういう扱いだ。俺はとことん先生に失望されているのだろう。たかが12点でこんな…っ、くそ、………まあ、俺も見た時は飛び跳ねるくらい嬉しかったけど。


そんなこんなで俺は部活動停止期間中は部活をしてはいけない。
赤司にきつく言われていた。


だけど赤司ィ、俺はそろそろ限界だ!!だぁーもう!バスケしてえバスケしてえバスケしてええええ!!!!!


卵を買い終え「またお越しくださーい」と気の抜けた店員の言葉を耳にしながら店を出る。



卵の入った袋を片手に歩いていると、横の方から小さい子供が走ってくるのが見えた。

俺の傍まできてコケる。地面に這いつくばって必死に痛みを堪えているその姿はすごくかわいかった。ああ?別にそんなんじゃねーよっ!!

派手に転んで泣くのを我慢しながら目にたっぷり涙をためている子供と、それを見ている大男。何かと変な図だ。これは手を貸した方がいいのか?いやでも相手女の子だし、いやでも泣きそう!今にも泣きだしそう!



「お、おい、大丈夫かよ…?」

「…ひっ、う、うわあ、ああああああああああああああああああんん!!!!」

「うおっ!?ちょ、泣くんじゃねえ!!」

「こわ、こわいよおおおおお!!!!」



まあそりゃあこんな目つき悪くて黒くて図体どでかい男、誰でも怖がるよな。
変に自嘲しながら俺は首の後ろをかく。

さてどうしようか。

こんなん通行人がみたら俺刑務所行きじゃねーか!


だけどそんな心配も、次の瞬間見事に砕け散ることになる。



「―――!うわあ、すっごい…っ!」



急に泣いていた女の子が顔を上げて目を輝かせている。

それにつられて俺も見ると、そこにはストバスコートでバスケをしている一人の女が居た。


ダムっ、ダムっ、とボールをついて空中に投げる。続けて自分もジャンプしてボールを手に持つとそのままゴールにダンクをした。

一人アリウープだ。


バスケにしては優雅で、それでもキレがすっごく良くて、小柄な体を生かして俊敏な動きを繰り返す。目で追うのも困難なくらい速い動きもあった。

だけど美しい。綺麗。こんな言葉がでたころには俺の口はもう開いていて、また一つダンクを決めた少女に向かって叫んでいた。



「おい!!!1on1しようぜ!!!!」



俺の方を振り向いた女の目が一瞬だけ見開いて、すぐ太陽の様な笑顔を浮かべてうなずく。

俺は卵の入った袋を放り投げてコートへと走っていた。

この時の俺は、すごい奴みつけた!という興奮とあの笑顔を見た時から鼓動の早い心臓を抑えるのに精いっぱいで、地面に落ちた卵パックの事はまったく眼中になかった。







すっげえ!こいつすっげえ!!
女で男の俺とここまで互角にプレーする奴初めてだぜ!男でもあまり居なかったけど!!





夕焼けに染まる二人の影と汗が交差する。

俺はこの時間が楽しくてたまらなかった。夢中でボールを追いかけ続ける。
名前もまだ知らない女とバスケに夢中になっている。

誰なんだろう、帝光の生徒か?それとも?
そんなことよりまだしたい!ずっとこのままバスケしていたい!こんなに興奮が止められない。テクニックとかは俺の方が上だけど、ここぞというときにボールをとられる。

楽しい!すっげえ楽しい!!






そして女の足がもつれて、一瞬だけ表情が強張ったのが見えた。

ん?なんだ、これ。






その時俺の横を抜いてった女が最後のゴールを決めて、この場はお開きになった。

一点差で、女の勝ちだった。








「はぁぁああーっ、つっかれたーーっ!!」

「お前、足、どうしたんだよ」



笑顔だった女は急に表情が固まった。笑顔が消えて、苦笑いがこぼれる。



「あ、あー、これね?ちょっと小学校の時ドジって怪我したんだよなー」



そして、小学校からバスケをしていた事、その足の怪我のせいでバスケ部をやめなければいけなくなってしまったこと。
またバスケを出来るようにはなったけど、何時間も続けてバスケをプレイできないということ。
何時間も本気でプレイし続けると今みたいに足が縺れたり、急に動かなくなったりするという事。
だけど私はバスケが大好きだという事。


自分の名前とかよりも先に俺にこの事を教えてくれたのは、今まで本気でバスケにプレイしていたからか。

こんなにバスケが出来るのに、あんなにバスケを大好きな表情でプレイしてたのに、神様ってのはつくづくムカつく奴だと思った。


俺に初めて勝った女。

まぐれかも、実力はほぼ互角かもしれないけれど、俺はその事実がすごくうれしかった。



「俺は青峰大輝!よろしくな!」

「知ってるよ青峰君。めっちゃ有名じゃん!私は清野サクラ」

「あ、え、知ってたの?」

「だってあたし帝光だし」

「はあああああああああ??!!!」



それから三軍のマネージャーをしているということも知った。

バスケを見るのも結構好きになったらしく、テツとも仲が良かったらしい。


そんな事をきいたらいてもたっても居られない。




それから、俺とサクラは深くかかわっていくのだった。

ちなみにこの時のサクラは結構まだかわいかった。


一軍のマネージャーが一人抜けて、赤司と一緒に三軍から引き抜きに行くことになろうとはこの時はまだ思っていなかった。

そして、共に月日が流れていく内に、男ばかりの環境のせいか少しずつゴリラ化していくのであった。



帰り付いてから卵を母親に怒鳴られたのはいうまでもない。



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