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 ナマエが『白ひげ海賊団』と呼ばれるこの海賊団に拾われたのは、もう一年以上前のことになる。
 今まで使ったことのない筋肉ばかりを使って体が悲鳴を上げていたのが、もう随分と懐かしい。

「よいしょっと」

 朝起きて一番初めの雑用は荷物整理で、それにせいを出しながらナマエはふうと額の汗を拭った。
 見渡す倉庫には、昨晩辿り着いた島から買い付けてきた色々なもので溢れている。
 甲板にあるそれらをもう少しここへと運んだら、後は自由な時間が来る予定だ。
 島へ降りる予定を立てていることを思い出して、ナマエはその口元をわずかににんまりと綻ばせた。

「……楽しみだなァ……」

「お、いたいた、ナマエ」

 一人でこっそり呟いたところへ声を掛けられ、ナマエはくるりと後ろを見やった。
 そこに佇んでいたリーゼント頭の海賊が、ひらひらと軽く手を振る。

「どうしたんですか、サッチ隊長」

 四番隊をその背に担う相手へ近付きナマエが訊ねると、あのよ、と言葉を零した相手がナマエへ向けて笑いかけた。

「マルコが呼んでたぜ」

 放たれた言葉に、ぱち、とナマエがその目を丸くする。
 マルコと言うその名前は、この白ひげ海賊団においては一番隊の隊長の名前に他ならない。

「マルコ隊長がですか?」

「そうそう、マルコが」

 思わず尋ねたナマエへ対して、サッチは軽く頷いた。
 その顔には嘘など見当たらず、いつも通りの人当たりのよさそうな笑みを浮かべている相手を見上げてから、ナマエは少しだけ考えた後で口を動かした。



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いないふり

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