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「…………」

 どんどん近付いてくる海賊の様子を見ているうちに、すぐそばまでやってきたらしい海賊の伸ばした手が、がしりとナマエの肩を掴まえた。
 それからぐいと引っ張られて、仕方なくナマエの視線が鏡から外される。

「…………何か用か?」

 すぐそばにいる海賊へ対して訊ねたナマエへ、『不死鳥』の名を持つ海賊がその顔の笑みを深めた。

「お前、ナマエだろい」

「?」

 名前を確かめられて、ナマエはその顔に戸惑いを浮かべた。
 なぜ、天下の白ひげ海賊団の一番隊長が、ナマエの名前を知っているのだろうか。
 ナマエは、自分がただの海兵であることを自負していた。
 どこぞの怪物や化物たちのように恐ろしく強いわけでもない、どちらかと言えば容赦なく使い捨てられる側の端材だ。
 ナマエがそれでも今まで生き抜いてこれたのは、その逃げ足が随分と鍛えられているからである。

「なあ、ナマエだろい」

 戸惑うナマエをよそに、不死鳥マルコが言葉を重ねる。
 返事を寄越さなければ逃がさないとばかりに肩を掴む掌の力を強くされて、ぐっと指圧されるような強さにわずかに眉を寄せたナマエは、それからそろりと口を開いた。



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