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 しかも、今日のナマエは『店番』である。
 もしかしたらもしかするだろうかと、そんなことを考えながらゆるりと足を動かし始めたナマエは、そのまま職場へ向けて歩き出した。







 そして、予想と言うのは案外当たるものである。

「なあ、兄ちゃん、この酒あるだけ欲しいんだけど、何樽なら出せそうだ?」

 にっかりと笑いながら尋ねてきたコックコートのリーゼント頭に、ナマエはしみじみとそんなことを考えた。
 名前が何だったかは覚えていないが、『白ひげ海賊団』の文字に惹かれて見やったことのある手配書にあったのと同じ顔だ。
 コックコートで写っていた男に、コックすらも賞金をかけられるのかと少しばかり驚いた覚えがある。

「二十樽までなら在庫がありますよ」

 出せる数を口にすれば、それじゃあそれ全部で、と言った男がベリーをナマエの前へ置く。
 随分な金額を勘定してからナマエが店奥へ声を掛けると、奥の方で作業をしていた店主が倉庫の方へと走っていった。

「カートも一緒だと思いますので、よかったら使ってください」

「おう、そりゃあ助かる」

 それを見送ってから体の向きを戻したナマエが言葉を投げると、それを聞いた男が嬉しそうに笑う。
 その顔を見やってから、それにしても、とナマエは言葉を続けた。

「海賊さんって本当にお酒が好きなんですね」

 そうだろうと予想はしていたが、まさか二十樽を一息に購入するほどとは思わなかった。
 特に目の前の彼が指定したのは、他の樽より二回りほど大きなものなのだ。
 あんなものを普通の船に何樽も乗せては、他の必要物資が入らないだろう。
 『白ひげ海賊団』の船って大きいんだなァ、なんてことを考えてしみじみ頷いたナマエの前で、お? と男が首を傾げる。

「なんだ、おれが海賊だって知ってたのか、兄ちゃん」

 その割に態度が普通だな、なんて言い放った男に、ナマエは少しばかり首を傾げた。
 『白ひげ海賊団』がそれほどあくどいことをしない海賊団であるらしいことは、噂で知っている。
 もちろん善人集団であるわけはないし、彼らを怖がる一般人も多いだろうが、ナマエにとってはそれほど恐ろしい対象でもない。悪とかかわった全てを滅ぼすと噂の海軍大将の方がよっぽどだ。
 不思議そうなナマエを面白がった様子で見やった男が、それから軽く肩を竦めた。

「まあ、今日は宴なんでな、いつもより多く買い付けてんだ。多分島を出る前にもまた買い付けにくるから、おんなじ酒が集まりそうなら用意しててくれると嬉しいね」

「はい、わかりました」

 そうして寄越された注文に頷いて、とりあえず手元のメモにその旨を記入してから、ナマエの視線が男へと戻される。

「宴って、お祝いごとですか?」

 何かいいことがあったんだろうかと、そんな好奇心にまみれたナマエの問いかけに、まあそうだな、と頷いた男は気安く返事を寄越した。

「うちの家族の誕生日なんだ、今日」



へえ、そうなんだ

それじゃあおまけでも

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