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 紙袋の中身は、ナマエの傍らにいる誰かさんの誕生日プレゼントだ。
 サプライズをしなければ死んでしまうとは言わないが、やはりどうせなら、ちゃんと渡せる場で伝えたい。
 そんな思いから、口に入れかけた串を持ち直したナマエは、浮かせた人差し指を軽く自分の唇の端に宛てた。

「内緒です」

 言葉と共に誤魔化すような笑みを向けると、それを見たマルコがぴくりと眉を動かす。
 どことなく不機嫌そうな目になった相手に気付き、あれ、とナマエが足を引こうとしたところで、伸びてきた手がナマエの手から最後の肉が刺さった串を奪い取った。
 ナマエの貴重な食料が、厚みのある唇の間を通って、健康的な歯に噛り付かれる。

「あ」

「ほら、とっとと帰るよい」

 軽く頬を膨らませながらそんな風に言って、刺さるものの無くなった串を片手に、マルコが先に歩き出した。
 待ってくださいとその後を追いかけて、ナマエも慌てて脚を動かす。

「マルコ隊長、あの」

「なんだよい。肉くらいいいだろい」

「いや別に、それはいいんですけど」

 何だか怒ってませんか、と尋ねたナマエに対して、マルコはふんと鼻を鳴らしただけで返事もしない。
 船に戻ってからもなかなか機嫌を直さない相手に、ナマエはとてつもなく苦労した。



end

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