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「……申し訳ないのですが、『ナマエはいなかった』とお伝えいただけませんか?」

 明らかな居留守を頼んだナマエに、サッチがその目を丸くした。
 不思議そうな顔で、いいのか? と相手が首を傾げる。

「マルコだぜ?」

「はい、マルコ隊長ですけど」

 本当にいいのかと尋ねてくる相手へ、ナマエはこくりと頷いた。
 どうしてサッチがこんなにも不思議そうな顔をしているのかと言えば、ナマエがマルコに懐いているからだった。
 元々ナマエを海から拾い上げたのもマルコで、自ら希望して一番隊へと配属してもらったのだ。
 そのナマエが『マルコが呼んでいる』という事象に対して逆らっているという事実が不思議らしい相手に、ナマエは少しばかり笑った。
 それから片手の人差し指を立てて、内緒にしてくださいね、と唇の端にあてる。

「マルコ隊長に、何かいいもの買いに行こうと思ってるんです」

 何故なら、今日が『不死鳥マルコ』の誕生日だからだ。
 ナマエの言葉に、ああなるほど、と納得したように呟いてから、サッチがまたも不思議そうな顔をする。

「でもよ、この間何か買ってなかったか?」

「あれはあれ、これはこれです」

 指摘されて頷きつつも、ナマエはそう言葉を述べる。
 先日立ち寄った島で購入したマルコへの誕生日プレゼントは、当然ナマエの宛がわれている部屋の私物入れに隠されている。
 だがしかし、何度思い返してももっといいものを買えたのではないかと思えてきてどうしようもなく、仕方なくもう一品を探しに行こうと思っていたところなのだ。
 ナマエの言葉に納得したようなしていないような顔をしてから、仕方ねえな、と呟いたサッチが軽くその手を首裏に宛てた。

「弟分が内緒で可愛いことしようとしてるんなら、手伝ってやるのが兄貴だよなァ」

「そう言ってくださると思いました」

 成人した男を掴まえて可愛いも何も無いだろうが、目の前の『兄貴分』が軽口をたたくのはいつものことなのでさらりと流して、よろしくお願いします、とナマエは笑った。
 それを受け、あいよ、と答えたサッチがそのまま部屋から離れていく。
 遠ざかっていく足音をしばらく聞いてから、よし、と気合を入れたナマエは袖をめくった。
 とりあえず、今は荷運びの仕事を終わらせなくては。






 荷運びの仕事は、中々に力のいる作業だったがどうにか終了した。
 終わった頃には既に昼頃で、昼食を島でとるか船でとるかと言った時間帯だ。

「うーん……」

 軽く声を漏らして、ナマエは顎に片手を添えた。



食べてから降りよう

島で食べよう

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