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 マルコの服を買うことは困難を極めた。
 マルコは青しか着ようとしないし、青なら何でも有りのようなのだ。
 少女向けアニメのプリントされたトレーナーまで指差され、さすがに女児用はやめたほうがいいだろうと宥めて目を逸らさせた。
 あれこれと服を購入しついでに着替えさせ終えると、いい具合に昼過ぎの時刻だ。
 くぅ、とマルコの腹が主張している。

「そろそろ昼飯にするか」

「よい!」

 俺の言葉にマルコが反応したので、俺達は荷物と共にフードコートへ移動した。
 やっぱり平日の昼間なので、そこそこ空いている。今日が週末や祝日でなくて本当によかった。

「マルコ、好きな食べ物はあるか?」

「にく!」

「……アバウトだな」

 四歳にして肉好きとは。
 とりあえずマルコのリクエストと食べられなかったものが無いかのヒアリングを元にして、俺は定食メニューの子供セットと自分用の焼肉定食を頼んだ。
 金を払ったら小さなアラームを渡されたので、不思議そうな顔のマルコへそれを渡してやる。

「なによい?」

「準備が出来たらそれを鳴らして呼び出してくれるんだ。ほら、席に座って待っとくぞ」

「よい!」

 マルコが両手に大事そうに機械を持って、荷物を持った俺と一緒に移動した。
 食事を購入した定食コーナーの前のほうのテーブルを陣取って、荷物を椅子の上に置く。

「食べ終わったら、次は雑貨だな。マルコ、フォークとスプーンと歯ブラシ以外だったら何が欲しい?」

「えっと、えーっと……コップ!」

 少し考えてから寄越された言葉に、分かった、と頷く。
 まだ小さいし、落として割っても困るから、プラスチックの奴をいくつか探そう。
 青い奴がいいんだろうか。
 とすると、スプーンも含めて、上の階のワンコインショップに行ったほうがいいかもしれない。
 夕食の買出しもしたいところだが、この荷物を考えると難しいか。

「他に欲しいのはあるか?」

「えっと、えっと、えーっと……わかんないよい!」

「じゃあ、見かけて欲しいのがあったら言ってみてくれ。大丈夫なら買ってやる」

 どうしようもなく高いものを指差されたときの保険でそう言うと、マルコは大きく頷いた。
 そこで、その手に持っている小さな機械が、不意に大きくピーピーと音を出す。

「びょっ!」

「ぶっ」

 どうやら驚いたらしいマルコが、変な声を出しながら機械を放り出した。
 そのあまりにもおかしな声と驚いた顔に、思わず噴出してしまう。
 いや、あれは反則だ。なんだ『びょ』って。せいぜい『よい』だと思っていたんだが。
 まさか大笑いするわけにも行かず、マルコから顔を逸らして必死にこらえる。
 くつくつ息を吐くように笑ってしまうのはもうご愛嬌だ。腹が痛い。苦しい。

「……ナマエ、わらいすぎよい!」

 笑い声を上げないよう必死な俺へ向かって、すねたようにマルコが言ったが、悪いと謝ることすらできなかった。





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