まるたん!
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※白ひげクルーとマルコ隊長



 誕生日おめでとう。

 そう言った俺を見やって、マルコはぱちりと瞬きをした。
 それから、呆れたように笑みを浮かべて、何を言い出すかと思えば、とその口が言葉を紡ぐ。

「まだ何日も先じゃねェかよい」

 ちゃんとカレンダーを見たのかと言われて、見たよ、と俺は返事をした。
 マルコの誕生日なんて、カレンダーを買った一番最初の日に、しっかりと赤いしるしをつけた。
 誕生日プレゼントだって用意したし、それを手渡しながら『おめでとう』と言う日を、俺は指折り数えて待っていたのだ。
 だけど、それが出来なくなったのだから仕方ない。
 元々俺はこの世界にとっては『異物』で、いつ弾かれたっておかしくなかったのだ。
 こちらの世界に来た時のように、俺は夢の中で『元の世界』にいる自分の夢を見るようになった。
 持っていたもののいくつかは、すでに夢の向こう側にある世界に落としてきてしまった。
 恐らくあと二日程度で、俺はこの世界から消えて、元いた場所へと戻ってしまう。
 もう一度この世界に来るなんてこと、どうやったらいいのかも分からない。
 ひょっとしたら二度と会えなくなってしまうのかと思えば怖くて寂しくてたまらないけど、それでも少しだけほっとしてしまうのは、もう二度とマルコに会えなくなるからだった。
 男の俺の口から言えばマルコに拒絶されることは間違いないような言葉が、誤って出て行かなくて本当に良かった。命の恩人で俺の大事なたった一人に、嫌悪の視線を向けられるだなんて想像するだけで心臓が潰れそうだ。
 会えなくなれば、きっと忘れられる。
 俺がいなくなればきっとマルコ達は探してくれるだろうけど、それを見越して置手紙を書いていくから大丈夫だろう。
 さすがにプレゼントを押し付けたら変に思われるだろうから、その時に見つけて貰ってくれたら嬉しいな、なんてことを少しだけ考えている。
 わななきそうな口を笑みに変えて、俺はマルコを見つめた。

 誕生日おめでとう。

 もう一度言葉を零した俺に、はいはい分かったよい、なんて言ってマルコが肩を竦める。

「どうせなら、当日にも聞きたいねい」



 それは無理なんだ、とは言えないまま、俺は曖昧に頷いた。



end
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