まるたん!
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「何してんだい?」

 後ろから唐突に声を掛けられて、びくりと体を震わせる。
 慌てて振り返ると、いつの間にやら開いていた倉庫の扉の通路側から、ひょこりと顔をのぞかせた誰かさんがいた。
 あまりにも俺が驚いたからか、不審そうなその顔に少しばかり怪訝そうな色を乗せて、その首が軽く傾げられる。

「何か悪さしてんのかい」

 問いかけられて首を横に振ると、どうだかねい、と呟きながらマルコが倉庫へと足を踏み入れてきた。
 近寄ってくる相手に、慌てて手元の物を目の前の箱へと押し込む。
 明らかに物を隠そうとしている俺を見つめて、マルコの目が少しばかり眇められた。

「何隠してんだよい」

 見せてみろ、なんて言いながら横に屈んだマルコが手を伸ばしてきたのを、慌てて抑える。
 しかし、俺とマルコの力の差は歴然で、こちらは無様に少し震えるくらい力を込めているというのに、マルコの手を降ろさせることも出来なかった。

「相変わらず弱いねい……ちゃんと鍛えてるか?」

 あの酷いトレーニングメニューを言い渡してきた誰かさんからの問いかけに、やってるよ、と答えつつ必死に抵抗する。
 ふうん、とそれへ返事をしながらも、更に腕に力を入れたマルコによって、その手が俺の目の前の木箱に触れた。

「よっと」

 ぐいと引っ張られて木箱が傾き、がたりと音を立てて中身が零れる。
 ああ、と悲鳴に近い声を上げながら零れたそれに手を伸ばした俺より早く、マルコの手がひょいとそれを掴まえた。

「……酒?」

 不思議そうに呟くマルコの手元には、くるりとリボンを巻かれたボトルが一本あるだけだ。
 可愛らしいそのリボンに、誰かの贈り物かい、とマルコが首を傾げた。
 そうだよと、仕方なく返事をする。
 それは、俺がマルコの為に用意したものだった。
 もうじき、マルコの誕生日だからだ。
 どうせならサプライズしようとここへ隠しに来たのに、当人に見つかるなんて、全くもってついてない。
 はあ、とため息を零した俺の横で、どうしてか少しだけ目を眇めたマルコが、誰のだよい、と呟いた。
 どうして急に不機嫌な顔になるんだろうか。俺を拾い俺に『海賊』になる選択をさせた不死鳥マルコは、相変わらず時々分かりづらい奴だ。
 手にはボトルを握ったまま、こちらへ向けられた視線を受け止めて、俺は軽く肩を竦める。
 そのボトルはお前のだ、誕生日おめでとう、と言葉を紡ぐと、俺のすぐ横でぱちりとマルコが瞬きをした。
 それからその目が手元のボトルをもう一度見つめて、そして先ほど倒した木箱がマルコの手によって起こされる。
 先ほどそこに収まっていたボトルが元に戻され、それを隠すために一緒に入れていた物もせっせと元通りにされていく様子に、俺が戸惑って視線を向けていると、やがて箱を戻したマルコがひょいと立ち上がった。

「そういうのは、もう一度当日に言えよい」

 そしたら貰ってやるよい、と言い放ち、こちらを見下ろしたマルコがにんまりと笑う。
 よく分からないが、機嫌が直ったなら良かった。


end
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