秒針 | ナノ

試合を終えて(1/4)

ピピーッー

3試合目の終了の笛が鳴った。朝から合計6セットにも渡るプレイをしてきたが、1セットも取らせてもらえなかった。けれど、この3試合で得るものは大きかったようで、みんなどこかしらイキイキしたように見える。

「もう1回!!」
「ダメだ!新幹線の時間があるんだ!」

翔ちゃんに至っては3試合してもなお、試合をやりたがっている。猫又監督は、翔ちゃんの底無しの体力にかなり驚いていた。

「片付け!」
「「「おース!」」」

それぞれの監督、コーチからの言葉を貰った後、すぐに片付けに入った。私はラインズマンフラッグをクルクル巻きながら、今朝、調理場で会った癒し系の人を探す。

「いないなぁ……あ」

体育館前の廊下をキョロキョロ見渡していたら、そこには昨日一緒にスポーツ店に行ったクロの姿があった。小走りで駆け寄る。

「お疲れ様です、黒尾先輩」
「おぉ、お前か」

彼は振り返り私を見ると、体をこちらに向けた。
両脇には折り畳みの椅子。そういえば、この後 別の団体が折り畳みの椅子使うから廊下に数脚置くように言われてたっけ。

「主将だったんですね。買い物に来てたくらいだから、てっきり1年生か2年生かと…」
「それで今日は変に改まってる訳ね。まぁ気にすんな」

むしろ今の話し方されたら方が気持ち悪ィと言われ、顔には出さないが内心少し凹む。人が頑張って気を遣ったというのに…!

「そうだ!あのリベロさんなんだけど」
「リベロ?あぁ、夜久か。あいつがどうかし、」
「夜久さんね!よし、覚えた!」

次はいつ会えるか分かんないけど、それまで絶対覚えておける自信がある。あんな爽やかな癒し系の人、そういないからね!

「なになに、夜久に惚れたとか?」

冷やかしてくるクロに、惚れたはれたというレベルじゃない!と言えばちょっと引かれた。そんなあからさまに態度に出さなくても…

「そういや、ゲーム好きな人ってどの人?」
「俺もちょうどその話をしようと思ってたところ」

クロに連れられ、体育館の入り口から中を覗く。
彼は、体育館の真ん中あたりにいる金髪だけどプリン頭になっている人を指差す。確かあの人は朝、翔ちゃんとタメで話をしてたセッターの人。って事は…

「1年生?」
「あれでも一応2年」
「じゃあ私と同い年か!」

私がそう言えば、クロは意外そうな顔をした。
あれ?これまさかの1年生に思われてたパターン?背が低いから!?

「あいつ結構な人見知りなんだけど、周りの奴曰く、ゲームに関してはかなりの詳しくて上手いらしいんだよねー」
「え!それホント!?」

スーパー○リオで1週間格闘し続けてるのに、全く倒せる気がしないボスがいるんだけど、もしかしたらそのボスの攻略法教えてもらえるかも!

「片付け終わったら攻略法聞いてみる」
「おー」

今日こそ あのステージクリアしてやる…!
そう意気込みながら体育館に戻る私を見て、クロが何か企んだように笑った事を知ったのは、少し後になってからの話。





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