「お邪魔しました!」
カバンと着替えを持って、女バレの部室から荷物を置きに男バレの部室に移動する。
マネージャーとはいえ、部員達と同じ場所で着替えるのはさすがに無理がある。なので、こうして時々だが、女バレの部室も使わせてもらっている。
先輩達に頼んでくれた女バレの友達にも感謝だが、急に来た私を嫌な顔1つせずに迎え入れてくれた3年の先輩達はほんと女神だ!
「お疲れ様で、」
「お前ら1年か!」
「「オス!」」
「おー!ノヤっさんだ!」
体育館に入れば、教頭先生を突き飛ばして1週間の自宅謹慎+約1ヶ月の部活禁止をくらっていたノヤっさんがいた。今日からまた部活戻れるようになったんだ!
大地さんが言うように、レシーブ力がお世辞にも良いとは言えない今の烏野にとって、リベロの復帰はかなり喜ばしい。
「なまえじゃねぇか!部活で会うのは久々だな!」
「廊下ではよく会ってたしね」
休み時間にジュース買いに行ってる途中によくバッタリ会う事があった。
「え!俺あんまりノヤっさんと学校で会ったことねぇのに!」
「それは龍ちゃんがいつも休み時間の度に寝てるから…」
1組の友達が笑いながら話していたのを思い出す。昼休みも食べた物の片付けもろくにせず、大口開けて寝ているとも言っていた。
「お前ドコ中だ!」
「北川第一です」
「まじか!強豪じゃねーか!どうりであのサーブか!!俺 中学ん時当たって2−1で負けたぞ!」
飛雄君のサーブを見たのか受けたのかは分からないが、ノヤっさんの興味は強烈なジャンプサーブを持つ飛雄君に向いているようだ。飛雄君の出身校と自身の出身校との試合エピソードについて熱く語っている。
「声でかいなぁ」
「相変わらずうるさい」
少し離れた所から、大地さんとスガさんのそんな話し声が聞こえたような…聞こえなかったような。
「ニシノヤさんは…どこの…中学…」
「千鳥山!!」
「!強豪じゃないですか!なんで烏野に!?やっぱり烏養監督の復帰を聞いて!?」
「私もそれ気になってた!」
強豪校出身かつノヤっさんくらいの実力や才能があれば、どこかしらから推薦は来るはず…推薦なら面接が主で、筆記試験が無い所やほぼ免除に近い学校が多い。前は強かったとはいえ、今は堕ちた強豪飛べない烏″と呼ばれている烏野。なんでここに決めたのだろう。
「俺が烏野に来たのは…」
「「……」」
珍しく静かに口を開くノヤっさんに2年の私達まで少し緊張した面持ちになる。龍ちゃんもノヤっさんがうちに来た理由を知らないみたいだ。ノヤっさんの表情が真剣なものに変わり一言。
「女子の制服が好みだったからだ凄く!」
「「……」」
表情とは不釣り合いな回答に翔ちゃんと飛雄君は言葉が出ないほどポカーンとしている。……そりゃそうなるよね。
「私、テーピングケース忘れたから取ってくる」
「待て待て待て!女子の制服だけじゃねぇ!男子の学ランもかっけぇだろ!色が黒のところとか特に!!」
「制服のデザインで学校決めてるのには変わりないじゃん」
「そ…そうだけどよ…!」
「ノヤっさん負けるな!」
必死で私に制服の良さを訴えるノヤっさんに龍ちゃんが横から訳の分からない声援を送る。確かに学ランもカッコいいけど、男子のブレザーも捨てがたいと私は思いました。……あれ、作文?
「あ!潔子さぁ〜ん!!貴女に会いに来ました潔子さぁ〜ん!」
「あっこんニャロ!」
「潔子さんこの野獣達から逃げて下さいィィー!」
「「野獣って何だ!」」
私がどうでもいい事を考えていたら、潔子さんが体育館に入ってきた。すかさずノヤっさんは彼女に飛び掛かろうとしたが、思いきりビンタされていた。
飛び掛かるとか野獣じゃん。美女と○獣じゃん。ん?でもこの場合、美女と野○じゃなくて美○と野獣達か。
「潔子さんに有り難きビンタを頂いた…!」
「羨ましいぜ、ノヤっさん!」
「次はグーで殴ってもらったら?」
はしゃぎ出す2人に他の人も呆れているだろうと大地さん達の方を見る。あれ、なんで大地さんとスガさん笑ってこっち見てるんだろう…
「で、旭さんは?戻ってますか?」
潔子さん談議がひとしきり終わり、ノヤっさんは手形が見事についた顔で大地さんの方を見る。
「…いや」
大地さんのその返事にノヤっさんの表情がガラリと変わった。
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