20歳
停戦条件は、砂糖以外
 夏の暑さに喉が水分を欲すあまり内側でくっつきそうなほどの晴天。気分がいいほどの晴れ晴れしいとはいえ暑さがまとわりつくと話は別だ。「あっつ……。」だというのに手元にあるのは甘いミルクティー。どうしてこれを選んでしまったか。糖分で少しは元気になるかなと血迷った結果だ。
「スバル、俺にもくれ。」
「え。」
 隣で同じく暑さにやられてる遊星が額の汗を拭いながら私に言った。
「甘いから逆に喉乾くよ?」
「この際構わない。ひとまず水分がほしい。」
 そう言われてしまえば渡すしかなく開けたままのペットボトルを渡すとぐっと持ち上げ中身を飲み込んでいく。背景の青空と勢いよく減っていく中身と上下する喉仏をつい見てしまい、真夏も似合う男だなとしみじみと思った。
「……甘い。」
 散々飲んでから顔を顰めて言う彼に思わず笑う。
「だから言ったのに。」
「……想像以上だった。」
 やっぱり買い直すか、とペットボトルを返してもらおうとしたその時。伸ばした手首を捕まれ引き寄せられると彼の顔が寸前まで迫っていた。当たる唇の隙間から侵入する舌がざらりと口内の唾液を攫うように舐めた。ちゅう、と音を残して離れた彼は「……ん。」と顎に手を当てた。
「ミルクティーよりも甘いな。」
「わ、たしも……飲んだ後だから……。」
 一連の流れに未だ付いていけず目の前がぐるぐると踊る。
「余計に水分が欲しくなるな、買ってこよう。スバル、何がいい?」
「…………甘くないので。」
「あぁ、そうだな。」
 背を向けて燃えるように赤い自販機に向かう彼の背中を眺めながら、ようやく……あぁ水分欲しさに私の唾液まで奪おうとしたのか、と理解して一気に汗が溢れ出す。
「……遊星、2本買って。」
 足りていないのは明らかにこちらだった。

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