あなたこそ私の聞いた“強さ”の意味を間違えて捉えている、と思ったけれど口には出さなかった。声にしてしまえばはっきりと私は弱いのだと認めてしまう。自分の言葉が空気を震わせて、どうしてだか前に発したはずなのに自分の耳に返ってくるこの言葉を、私が一番聞きたくなかった。
スクリーンに大きく映し出される遊星。昨晩背中で感じたほんの少しの温かさが、たしかに傍に居ると、私と共に歩んでくれていると思わせてくれている。実際の距離はこんなにも遠いというのに。
手を伸ばして届かない事なんか一度もなかった。けれどそれは閉鎖空間の中の話であって、あの歪な家から出てみれば、彼はあんなにも大きかったのだ。手が、届くはずがなかったのだ。私がここに居れるのはたまたま同じ場所で育ったという奇跡だけで成り立っている。ぶっきらぼうだけど人情溢れていて、何処までも真っ直ぐな彼をこの世界は受け入れるだろう。……なら私は? 彼と同じ場所にも、彼と同じ歩の早さにも付いていく事が出来ない私は。私は──……。
もしかしたら遊星に付いて行きたくなかった本当の理由は、この距離を目の当たりにしたくなかったから、なのかもしれない。なんてちっぽけな心だろう。こんなこと、気付きたくもなかった。
BUCK