6
音パロ
ゴシュとシル(高校生と小学生)
(ザジシル&ゴシュアリ)
ドアを開けると、雪景色が広がっていた。それと共に、冷たい風が入り込む。
うぅ、寒い。
呟きながらポストへと急ぐ。
去年と同様、大量な年賀状にあいかわずだなぁ、とぼやいた。
辛うじて抱えることができた葉書を溢さないように居間に運ぶ。
元旦の初めの作業はいつもこれから始まる。
シルベットと宛先を分類するのだ。
今年も両親への挨拶の葉書が沢山。
「お兄ちゃん、早く早く!」
「みかん、どけてもらえますか?シルベット」
はい、と素直にシルベットがテーブル上にスペースを作る。
そこに葉書の雪崩を置くと、作業の始まりだ。
父、母、父、父、僕、母、シルベット父、シルベット、母、母、父、父、僕、父、母、シルベット…母、……‥
終わらない山をつつきつつ、やっぱり自宅で営業している音楽教室宛と父宛の量に大人の社交は大変だね、と向かいに座ったシルベットと話した。
すると、突然シルベットがあー!!と小さな口で叫んだ。
「あー!アリアさんからだ!二枚ある!」
「え?」
「はい、これ」
僕とシルベット宛にわざわざわけたんだろうか?と思いつつ手渡された葉書はアリアからのシルベット宛だった。
「シルベット、これが君宛…‥‥」
「去年は高校の文化祭に来てくれて、ありがとうございました。楽しかったです。来年もよろしくお願いしま」
「わー!なに人の葉書を読み上げてるんですか!」
「へぇ、お兄ちゃん、私の知らない間にアリアさんの文化祭に行ったんだ!どうなったの!?」
「どうだったじゃなくて、どうなったて…‥質問がへんじゃないかい?」
「で?」
「…どうもありませんよ。演奏を聞いて、軽く出し物を見て周って。で、帰りましたよ」
「手ぐらい繋いだんでしょ?」
「なんで手を繋ぐ必要があるんですか?」
迷子でもないのに。
呟けば、シルベットにじゃぁ、前迷子になったときは手を繋いだの?と目を輝せながら聞いてきたから、シルベット宛のラグの分だよ、と別の葉書を突き付けた。
ラグとコラボした時のお礼と挨拶が綴られたそれを読み上げ出したシルベットに安堵の息をつきながら葉書の整理を再開すると、シルベット宛の別の男の子からの葉書が顔を出した。
「‥…ザジ‥?」
「えっ?お兄ちゃん、それ貸して!?」
「去年は大変お世話になりました。今年もよろしくお願いいたします‥ザジって誰ですか、シルベット」
「えぇと。かなり前に少しだけうちの教室に来ていた…‥」
(うう、お兄ちゃんの目が怖いよー)
ザジからの年賀状を読み上げたお兄ちゃんが微笑むかのように目を細めて、教室でお世話になったお礼なら、なんで父さんじゃなくて、シルベット宛なんでしょうねと問うから、叫ぶように答えた。
ラグ経由で再会して仲良くなったのよ!友達としてだから!と。
(ラグはよくてザジはなんでそんな剣呑な顔になるの、お兄ちゃん!)
お兄ちゃんの基準がわからないと思いながらザジからの葉書を、お兄ちゃん、ちょうだい?と主張する。
ザジからの葉書の救いの綱は、彼がありきたりな挨拶しかかいてくれなかったことだろうか。
来年からアリアさんの葉書は、こんな時の切り札にしよう。
胸とフルートにかけて誓った。
____________________________________
お正月ネタでした
[ 47/116 ]
/soelil/novel/1/?ParentDataID=16