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ジギー・ペッパー



(大地にしっかり根を這っている、大木になりたい)



孤児院で育った俺はアルバイトをしながらの高校生活でトランペットに出会った。
同じ孤児院にいた奴らが楽器奏者になっている噂を聞いたのがきっかけで、安く手に入ったトランペットを暇あらば引いた。孤児院にいる時は弟分や妹分に弾いてやったりしていた。
その時、弟分のネロが学校に行って、本気でやったらいいよ!と言い出して、好きなら本気でやれよ!と言われて、孤児院で雑務とアルバイト生活をしていた俺はトランペットとありったけの貯金と夢を抱えて大学に行った。
留学もして、トランペットを極めている。それでもまだそこら辺にいる音大生、としか見られないレベルで、今なお学生をしてトランペットを引き続けている。



(君もそうじゃないか)



同級生で、遅れて大学に行きだし留学をして年を重ねた俺より、年上のマルチ奏者にそう言われた。
言い換えれば同じ穴の狢だろ?と。
生憎俺はお前みたいに幼い頃からやっていたわけでもないし、才能があるわけでもない。
だから、俺は一つの事に絞ってる、と言って、トランペットをケースにしまった。
肩を竦めてピアノに背を預けた彼は君は格好いいね、とぼやく。
そんな奴にじゃぁな、と言って教室を後にした。



多分、あいつはマルチにできるから一筋の俺の事が理解できないんだろうと思う。それでも色々弾けるのは格好いいだろう、と呟きながらバイクに跨がった。
目指すは懐かしの孤児院。
一度は一流のトランペット奏者に、立派になってから帰ろう、と決意していた。
けれど妹分のネリがネロの持病が悪化した事を、手紙で連絡してくれた。それ以来ネロに会いに時々、実家こと、孤児院へバイクを走らせるようになった。
院のメンバーに会う度、希望や夢が膨らむ。
いつか、俺の原点で家族である孤児院のメンバーを幸せにしてやりたい。これは夢だ。
だから、俺は一流になりたい。
これは目標だ。



しっかり地に根差す大木のようなトランペット奏者に。
そして生い茂る若葉のようにあいつらにトランペットで休息を与えたい。
そして俺はあいつらの希望になりたい。これは夢で、目標だ。



















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ジギー・ペッパー:トランペット
音大三年生

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