main | ナノ



5

4の続き。
───────────



風邪のせいだから、と言い訳して夕飯後の食器洗いをするロイドを引き留めた。

「病人はさみしがり屋なんですー」
「どのみち、コンサートの時間まではエレナのために時間空けていたんだし、ここにいるよ」


笑う彼にありがとうと返した。
かちゃきちゃと食器を洗う音が響く。
それ以外の音がしないのが嫌で、ぷちん、テレビをつけた。アナウンサーの声が鼓膜に届く。そして、え、と驚いた。


「ロイド、ロイド!ニュースでフルート奏者のヤングコンクールの結果発表してるー!これ、ゴーシュの妹じゃないの!?」
「え?」


ロイドはテレビを指差すあたしを見て、慌ててテレビに目を向けた。
確かにそこには銀髪に青いワンピースの少女がフルートを演奏する姿があった。画面下に最優秀賞受賞、シルベット・スエードさんの演奏とある。
あんぐりして、顔を見合わせた。やっぱり、ゴーシュの家庭は音楽一家なんだね、と笑いあった。
食器を洗い終えた彼が、布団に座る私の傍に腰を下ろす。


「コンサート、無理だったけどいいものが見れたね」
「そうだね。明日は‥お祝いしてるだろうね」


微笑みあって、テレビから流れるフルートの音に耳を傾けた。
シルベットのフルートの音色、それは荒削りだけど優しい音色で、あたしの部屋を一瞬にしてコンサート会場に早変わりさせた。


「上手いね」
「うん」


車椅子に乗ったシルベットがペコリと頭を下げて、ニュースの画面が切り替わる。
アナウンサーの声以外、無言が流れるけど、嫌な沈黙じゃない。
肩を預け合った体温から優しさを感じる。ちょっとだけ、素直になろうかなと思ったのはフルートのお陰か、ぬくもりか、両方かもしれない。
とりあえず、今日はありがとう、とお礼が言えた。
お礼を言われることじゃないよ。直ぐ傍から聞こえた声は優しかった。







────────
シルベットが出ちゃった。
音で出してないのに出ちゃった。
ちょっと反省←
とりあえずほのぼのが出来たので自己満しています。←

[ 34/116 ]
/soelil/novel/1/?ParentDataID=16


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -