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ラルゴ・ロイド






(空を見るとうつろげて、僕みたいだ)




そう、思った。
一体、いくつなんですか?と後輩や同期によく聞かれるけれど、君より3つ、4つ上かな?なんて応えてきた。
高校から幼馴染みと一緒に音楽学校にいって、色んな大学に2年、1年、在籍したり編入したり、留学を転々と繰り返した。だから必然的に大抵の同級生よりは年上で、下手をすると先輩より年上だったりした。
転々とする度、色んな楽器を専攻してきた。
素人よりは大抵の楽器はできる。プロには大抵の楽器は劣る。
そんなアマチュアになった。
転々とする分、お金はかかるから比較的小さなホールでソロや重奏を開いたり、企画して、学費に当てたりした。今もそんな転々とした学生で、よくつるむトランペット奏者に溜め息を吐かれる。それでも彼だって留学したり転々としているから君もそうじゃないか、と言ったら、俺は一つの事に絞ってる、と返された。
それには肩を落とすしかしかない僕は苦笑いした。
だって、いくつもの楽器を弾いてはやめて、触れては離れて、を繰り返してきたのだ。返す言葉もない。色んなことをやりたくて、うつろげに沢山の楽器を弾いてきた。
それでも本命にはまだ挑戦していなくて、臆病者かもしれないな、と自分を笑う。

いつだったか、中学生頃に幼馴染みに聞かれた。なんでそんなに沢山の楽器をマスターしようとするの?と。
未だ両親にすら打ち明けていない夢をその時、言った。
指揮者になりたいからだよ、と。

それは今なお続く夢で、手を伸ばしていない。
うつろげな僕はまた、飽きて別の事に手を出しはしないかと、怖れてる。たぶん、幼馴染みはずっとハープとピアノを続けていて、それは僕にはできない芸当で、始めこそ僕が上手かったのにいつの間にか実力は遥か上になっていた。彼女はまだそれを自覚していないみたいだけど、続けるのが苦手な僕はまだ、本命に手を出せずにいる。
楽器にしろ、恋愛にしろ。
だからトランペット一筋の彼に君は格好いいね、と言った。














ラルゴ・ロイド:雑多に何でも
音大三年生
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