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8

ゴーシュとアリア
添い寝の事態に到るまでの小話。

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シチューをグツグツ煮込んでいる時の事だ。ブザーが鳴ったからはぁーいと返事をして出たら、少し雨風に濡れたゴーシュが立っている。驚いた。
どうしたの?そう聞く前に、ゴーシュが口を開いた。


「今晩、泊めてもらえますか?」
「‥ええと、何があったの?」
「鍵を無くしちゃいました」

困ったように頭をかく彼の髪の先からは僅に水が滴る。
鍵を無くして、管理人さんに開けてもらおうと思ったらいなくて、今日はもう帰られてたみたいで。で、無理な要望なんだけど、泊めてもらえますか?
苦笑いした彼をあんぐりと見つめていたから慌て、あ、う、うん、わかった!と答えた。


「シャワー使う?」


玄関からすぐ近くにあるお風呂場からバスタオルを取り出して渡しながら聞いた。彼は悩みつつ、着替えになるものありますか?と聞いてきた。生憎ゴーシュが着れそうな洋服は無い。
着れそうな物といったら裾丈が短くなるけれどバスローブぐらいだ。



「バスローブを着て、その間にシャツやらを洗濯して乾燥機にかける?」
「それでお願いします」
「じやぁ、お風呂へ。ガスの扱い方はゴーシュの部屋と変わらないと思うから。備え付けの洗濯機と乾燥機の操作もわかるよね?」


バスローブを渡しながら言うとはい、すいませんと眉を下げた彼に困ったときはお互い様だから、と答える。相変わらず煮込んでいるシチューはグツグツといい匂いをを出し続けていた。



ゴーシュがシャワーを浴びている間、夕飯の盛り付けに時間をあてる。今まで日の目を見なかったお客様用の平皿が活躍する。なんだか、用意していてよかったと自然と口元が緩む。
パンとシチューを盛り付けて、普段は食べないサラダを用意しているとなんだか新婚みたいな事をしているな、と思って顔が熱くなった。




(いいえ単に誰かと一緒に夕食を食べるなんて久し振りだからよ)




体が熱い気がしたから言い訳する。気が付いたらどきまぎしていた心臓を落ち着かせたい。
二人っきりだとか、新婚みたいなことしてるだとか、相手がゴーシュだから?とかそんな事ばかり考えて目まぐるしく回る思考を止めたい。
大丈夫。
たとえ私が彼に好意を抱いていてもそれはちっぽけなものよ。顔になんて出さない。出せない。
やるべき事を考えて、思考と思いから彼を追い出す。
深呼吸して真っ赤なトマトを盛り付けた。運ぶ先は僅かなキッチンスペースの先にあるリビングのテーブル。
リビングの隅にベットがあるからリビングは半寝室状態。そこの中心にある卓袱台ともいえる高さのテーブルに夕飯を並べる。
テーブルがいつも以上に埋まって、二人分なんてこんなに量があるんだ、と思った。
ことり、最後にお皿を置いた時後ろからありがとうございますと声が聞こえた。


「ゴーシュ!あ、あがったのね」
「うん。夕飯の用意、ありがとうアリア」
「いいえ、さ、温かいうちにたべましょう?」


笑ったら湯気とバスローブを纏った彼がはい、と素敵な笑顔で言ったからどきん、心臓が強く脈打った。
大丈夫。
落ち着いていつもお昼を食べるときは一緒なんだからそんな要領で食べればいいのよ、と言い聞かせる。カーペットの上に座って一緒にいただきます、をした。向かいに彼がいてそれが私の部屋の中だと言うことを思ってしまって、また心臓が痛んだ。


「このシチュー、美味しいよ、アリア」
「本当?ありがとうゴーシュ」
「本当に。そして、色々ありがとうアリア」


にっこり微笑みながら言う彼に私は、なんなら今度作ったとき、またお裾分けするよ?と言うのがいっぱいいっぱいだった。




大丈夫
(たった一晩の事なんだから)


踊る心臓を宥めるのに苦労した。














色々このあと乾燥機から出した洋服にゴーシュが着替えたりだとかテレビ見出すとかあるけど、ごめんなさい私の頭がパンクして書けなくなりました。
だってこいつらが一緒に夕飯を食べているだけでもう、いいと思えたんです。いい。
本当は続きがあるけどまた後日に。


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