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2

ロイドとエレナ
高校生の彼ら。(高校も同じ学校。)


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あいつと無邪気に笑って遊んでいたのは中学生になる前の話だと思う。


あたしの親とあいつの親は仲がよかったからお互い家族ぐるみでよくお家にお邪魔してた。親達が難しい話をテーブルでしている間、あたしとラルゴはソファーに座って待ってた。ラルゴはお行儀よく本を読んで夢中になってて、あたしはぷらぷら足を動かして退屈しのぎ。次にソファーに寝そべる。大人が三人座れるソファーだったからあたしが横になってもラルゴはなんなく読書に没頭していたんじゃないかな。仰向けになったりうつ伏せになったり、それでも退屈は変わらなかったから、ご本に夢中な彼の肩に手を置いた。
ん、と彼がこちらを向いた瞬間指をたててやる。
ぷすり、指先が無防備な彼の頬に埋まった。


「やったな‥、エレナ!」


まるでそれが合図かのようにほっぺの突き合い合せんことじゃれあいが始まった。
懸命に指先を避けたり伸ばしたりして、きゃきゃ笑った。無防備に。素直に。
そうやって無邪気に笑い合ったのは小学生までの間のことだったか、中学生になるまで続いていたかは覚えていない。
ただ、久々に訪れたロイドの部屋に入ると無性に彼の頬をつついてやりたくなった。
明日、きちんと整理され必要最低限しかない部屋の彼は、私たちの通っている高校の姉妹校へ留学する。普通なら洋服をキャリーケースに詰めることに夢中になってる筈の時刻なのに彼は既に終えて、英語の勉強に夢中になっていた。
どうやらあたしが部屋を訪れた事すら気づいていないらしい。こっそり近付いて指を構えて肩に手を置く。対策として反対側の位置にも指を構えた。
こんなことは高校生になってからはしていなかったな、と思うと胸が痛んだ。理由なんてわからない。きっと理由なんてないのよ、そう思った。



ぷすり。


なんだい、エレナ、とロイドが言いながら振り向いたら指は彼の頬に埋まった。
やってくれたね、と愛想笑いを眼鏡越しにくれた彼を見て、えへへ、と笑いながら退屈だなぁと思った。
彼はいつからこんな風に笑うようになったのだろうか。
椅子やソファーは無いからベットに腰を下ろすとロイドが勉強机から立って、私の横にすとん、と座った。そしてあたしの頬をつつく。


「挨拶しに来てくれたの?」
「一応ね!お土産話を楽しみにしてるから」


つつかれた仕返しに彼の額をデコピンした。あいたっ。ささやかに悲鳴をあげた彼はやってくれるね、と呟いてニヤリと大人な笑みを浮かべる。本当にいつからこんな笑い方になったのだろう。
仕方がないからデコピンしようと構えた彼から逃れようとベットで攻防を始めた。

「ひやぁ、危ない!」
「自分は人にしておいて逃げるなんて卑怯とは思わないの、エレナ」
「力の差があるんだもの、ロイドにデコピンされたらあたし、泣いちゃうかもよ?」

無駄な動きをしつつ逃げるあたしをあいつは必要最低限なゆっくりな動きで追う。
緩慢な動きを見ると、もしかしたら英語の勉強をもっとしたかったのかな、なんて思った。




「エレナ、」
「ん?」
「よし、捕まえた」


名前を呼ばれることで気がそれたのか、いとも簡単にあたしは彼に抱きすくめられた。やられた!と思った瞬間にうぁー捕まった、とため息を吐くように呟いた。
たった名前を呼ばれた、それだけでなんでつかまるかな。あいつはそこまで計算していたのかな。あたしに悟られないように計算するのはお得意だもんなぁ、と頭を垂れた。
項垂れた瞬間、チョップが振り下ろされ、あいたっと今度はあたしが悲鳴を上げる番で。


「デコピンで泣かれたら困るのでチョップだよ」
「チョップでも泣いてあげようか」
「泣くなら、留学するからって泣いてほしいかな」


ゆったり笑った彼にそれはしてあげないよ、と笑い返した。そんな笑みしか浮かべないあんたの為に泣いてなんかやらない。
ぷすり、抱き締められたままの至近距離からロイドの頬をさした。


「君はやってくれるねぇ」
「ロイドに言われたくないかなぁ」


苦笑いした彼はじゃ、仕返し。そう言って耳を甘噛みしてきて、ひっ!!とあたしは小さく叫んで奴の耳を引っ張った。



「本当にやってくれるねぇ、エレナは」
「苦笑いしてくれる優しいロイドさんには負ける気はしないからね」
「言ってくれるねぇ。ここ、ベットだから押し倒されるとか思わないの」
「残念ながら、優しいロイドさんはあたしにはそんなことをしない自信があるので」

にっこり、奴の本心を隠す笑みを真似しながら答えた。たいした自信だね、と苦く笑う彼はやっとあたしを解放した。
相変わらず彼はゆったりとした大人な笑みを浮かべている。
そしてようやく、行ってくるね、と呟いた声が寂しそうに聞こえた。だからあたしも素直にいってらっしゃい、気をつけて。寂しさを噛み締めてそれをやっと言えた。



無邪気に笑いあった頃に
(戻りたいね)
(きっとあたしもあんたもずっともっと素直だった)














ちなみに彼らは付き合っていません。でもじゃれ合っていて欲しいんだ!という私の理想がぶちこまれています←

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