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アリアとエレナ
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友達作りのきっかけって入学式で隣の子や、同じクラスの席の近い子から始まると思うの。
だけどね。
入学式の4月を留学で潰したあたしにはそのチャンスが無いのよね。
どうしたもんかなぁ、と一般教養の講義の授業中に考えた。
音大は好きなハープに集中できるけど所詮は大学。1年の間は一般教養が付きまとう。クリアできなきゃ、別の学年でまた学ばなければならない。面倒くさいのが本音。
私は長いこと留学していた。数年だったと思う。
入学して一ヶ月でひょんな事から留学が出来ることが決まって、そのまま長いこと現地にいた。
今年の5月に戻ってきたけれど、周りはもちろん知らない人ばかりだった。かろうじて私と同じように留学をしていたロイドが数少ない残っている友人だった。もっともロイドは転々と留学を繰り返していたから私とは違う歳月の重ね方をしたと思う。
だからか、彼はこの講義を採っていなかった。
つまらないなぁとペンを回しながら、ふぅ、とため息を吐いたときだった。


「ハチノスヒルズ、ユウサリ…の202号室…‥?」


隣からあたしのアパートの住所が聞こえてきた。
え、と思って振り替えると一席分空いた隣に金髪の女の子が座ってた。
体勢から察するに鍵を拾ったらしい。部屋番号のタグのついたあたしの。


「あ、すいません。これ貴方の鍵ですか?」
「あ、はい!ありがとうございます」


綺麗な手の彼女から鍵を受けとる時、触れた指先は固かった。もしかしたら彼女は管弦器学科かな、と思った。


「あの…‥ハチノスヒルズに住んでいるんですか?」
「え、ええ、まぁ…‥」
「私も!私もハチノスヒルズに4月から引っ越してきたんです」



目を細めて、よろしくお願いします。と微笑んだ声は可愛らしかった。
遅れて、あ、アリア・リンクって言うの。アリアと読んでと言う彼女に私はエレナ・ブラン、エレナで、よろしく!と笑顔を返したら丁度先生に教科書を読むよう指名された。










エレナちゃんとアリアさんの出会いの小話。

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