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ゴーシュとアリア
ボルトはアリアさんのペット
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横たわったボルトが手術室へ吸い込まれていく。
ボルトが緊急手術を受けることになった。その事実に頭は真っ白で、働かなくて私は無機質な病院の椅子に座り込んだ。手術中のランプは無情に明々と光っている。廊下を照らす蛍光灯のほのかな灯りは私の気持ちを不安定にさせるに十分だった。
いままでずっと一緒にいたボルトが緊急手術をするほどの大病を患っていたのに気づいてやれなかった自分を悔やんでしまう。座り込んだまま、唇を噛む。今は待つしかないのだ、と言い聞かせて。
何もできないことが歯痒くて歯痒くてたまらない。ただ白いだけの床が何故か恨めしかった。
祈るように指を組んで額にあてて、瞳を閉じた。ボルトが助かりますように、と。
すると、そっと、私の頭に触れる手があった。
撫でてくれる手で、やっと彼の存在を思い出した。
ゆっくり、隣に腰を降ろしている彼に視線を馳せる。
「だいじょうぶ」
根拠なんて無いけれど、そう言って苦く笑った彼を見るとはりつめていたものがほどけた気がした。
そっと肩を抱いてくれて、シルベットによくやっていたのか、優しく背をさする温もりに涙がこぼれそうになった。
そのまま抱き締められて彼の腕の中ですすり泣いた。
ありがとう
(感謝しきれない思いで涙した。)
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