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5


ゴーシュとアリア
ほのぼの



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北風がふいた。
彼女の髪がなびいて、次に僕らの体温を少し拐っていった。
そうして、思いだした。



それは小学生の時の事。
今日みたいに寒い日、するり、絡めた指先が暖かくて、そのままポケットに突っ込んだ事を。
え、と小さな悲鳴が聞こえたから、嫌だった?と聞いたら左右に首を振りながらそんなことないけど、と呟く声が可愛らしく届いた。
返事代わりにポケットの中できゅ、と握りしめた懐かしい記憶。







そんな風に最後に手を繋いだのはいつだったかな、と思った。
中学生か小学生かの時に舞台裏で手を繋いで歩くことがあった。僕も、アリアもあの頃は迷子になりがちだったから、手を繋いで歩くことにしたのがきっかけ。
以来、人混みの中にいるときは手を繋ぐことが、時々あった。
けれどそれは遠い記憶でどうして手を繋がなくなったか、どうしても思い出せなかった。


だから、ふと、思ったんだ、もう一度繋ぎたいなって。唐突だったけど。
学校からのアパートまでの帰り道。隣を歩くアリアの手にするり、絡ませた。
最初何事かと驚いた彼女はビックリして僕の方を見た。目を見張っている。
嫌?嫌なら言って、と言うとあの頃みたいに彼女はふるふると左右に首を振った。そしてぎゅっと温かい手で握り返してくれた。調子にのってジャケットのポケットに握った手を突っ込んだら、懐かしいねとささやく声にそうだねと返した。

なんだか嬉しくなって、そうだね、と言った。












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