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エレナ・ブラン

(たぶん、近くにいたかったの)




どうしてピアノと、ハープどちらも弾けるの?と聞かれたら、近くにいたかったの、と素直に答えてしまいそうで、一瞬言葉に詰まる。
ハテナを頭に浮かべる相手に、気にしないでっ!と慌てて言って、二つできる方が格好いいと思ったんだ、とか応えてた。






ハープは幼い頃からずっとしていた。
ピアノは小学校高学年から。






たぶん、いつもよくつるんでいたラルゴがピアノを始めたのが小学校高学年で、一緒に始めたんだと思う。
ラルゴは本当に気心の知れた幼馴染みで、よく馬鹿やって遊んだ。彼の両親とうちの両親とは仲がいいご近所さんで、幼馴染みの典型の関係を築いてきた。
ただ、あいつは幼い頃からハープをやってたり、ヴァイオリンをしていたり、フルートをしていたり、色んな楽器に携わってはマスターして、別の楽器に触れていった。
聞いた話によるとあたしとラルゴは同時期にハープを始めたらしく、ラルゴはトントン拍子に上達していった。気が付いたらそれなりにマスターしていたらしく、彼の興味は別の楽器へと移り、新たな楽器を弾いていた。
察するに、あたしの両親は誘われたら断れない質だから、ロイド家に誘われて私にハープを教えたのだと思う。そこに才能と一般人の差があって、あたしとラルゴは大きく差が開いた。
穏やかな彼がいくつもの楽器をマスターしていくのを見ると羨ましくて、仕方なかった。だから遅くても間に合うと聞いたことのあるピアノは彼と一緒に手を伸ばした。
それでもいつも先を行く彼はピアノでもいつの間にか先に進んだ。

いつも、あいつはそうだった。

何でもすすいのすい、とこなして先を行く。
中々成長しないのが悔しくて、追い付くのに必死になって、あたしはずっとハープとピアノを続けてきた。
それでも彼は瞬く間に沢山の楽器をそれなりにマスターして、あたしとの差を広げていった。




一度、何でそんなに沢山の楽器をマスターしようとするの?と聞いた事があった。
すると彼は指揮者になりたいからだよ、と笑って答えてくれた。




それは中学生の時の事で、夢が決まっていなかったあたしはまた先を行かれてる、と悔しくなってハープとピアノに没頭した。
そして、そんなにあいつに先に行かれるのが悔しいならいっそ、楽器に触れなければいいんだ、と思って丸一日弾かない、なんて事をした。だけど楽器から離れるには一般人のあたしの中で、楽器が占めているスペースは大きくて、離れられなかった。
だから次に比べられないように彼から離れよう、としたらそれも無理だった。
結局、あいつもあたしの大半を占めていたのだ。
最終的にあたしは離れられないなら近くにいたいなと思った。だからハープとピアノを続け、ハープを大学で専攻するようになった。



才能のあるあいつから離れられなくて、近くにいたくて、ならピアノよりもハープのデュオの方が素敵かな、なんて。
そして、たくさん弾けるあいつみたいになりたかったら。なんて。


何気なく聞いてきた金髪の親友にはまだ、語れなかった。

















エレナ・ブラン
ハープ(ピアノ伴奏も可)
音大2年生
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