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昨日のアリアサイドの続き。
一人暮らしに引っ越した先のお隣さんは幼なじみ!



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部屋に害虫ことゴキブリが、出た。


害虫駆除はやったことがあるから出来なくはないけれど、それでも虫が潰れる瞬間は嫌でしかない。
嫌な印象しか無い害虫を見て、過ったのは家族総出で駆除に走り回った事だった。いつもは家にいないお父さんもお母さんも、珍しく一緒に室内をかけずりまわった。結局はボルトが前足で退治してくれたのだけど、その時は珍しく家族で笑ったけ。
どう退治しよう、そう思って硬直していたら急にワンルームの部屋に一人いるのが切なくなって、思わず部屋を飛び出した。
隣の部屋のゴーシュに抱きついて泊めて!!と、叫んだ。
ぽつり、ぽつり、ゴーシュの質問に答えたら何だか冷静にはなってきたけれど抱きついたゴーシュの体温は懐かしくて、人肌恋しかったんだ、と何も考えずに動いた自分の行動に一人納得した。けれども頭を撫でながら抱き締めてくれる彼に訳を説明するのが恥ずかしくて、変わりにぎゅ、と彼のシャツを握り締める。それに応えるようにぎゅ、と抱き締められるとおさまった涙が再び流れた。



「ありがとう、ゴーシュ」
「もう大丈夫?」
「うん」


にこり、笑ったつもりだったのに包容力のあるチェロを奏でる彼の手が頬に触れる。え?と思ったら指が涙をなぞって拭った。


「ごまかさなくていいよ、泣き足りないなら、まだ、」


いつもよりずって近くにある顔に驚くまもなく、ポタリ、それは溢れ出た。頬を伝って床に歪な円を描く。まるで不安定な自分の心のようだった。
何と言ったら言いか迷う不器用な彼の思いが頬に触れる指先から伝わる。



コツン。



ゴーシュが額をぶつけてきた。そこからも、気遣ってくれているのが伝わる。
間近にある顔が優しく微笑んで、スッキリするまで泣いていいですよ、と言われたのをきっかけに溢れる涙が加速して、声をあげそうになる。それは本当に申し訳なくて、彼にまた抱きつく。声を殺すように彼の胸にうずくまって泣いた。
抱き締めてくれる手が、優しくて、恋しくて。
気遣いが嬉しくて、懐かしくて。




ホームシック
(思わずすがったのは、彼だった)
(思い出したボルトや家族の温もりに涙が止まらなくて)





























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