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8

甘い?ロイエレ
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額をくっつけられた。


目の先には目。間4センチ。
鼻の先には鼻。間1ミリ。
口の先には口。間8センチ。

状況把握は頭が追い付かない。熱があるねと至近距離で言われて、じゃぁこの働かない頭は全て熱のせいだとしよう。曲がりなりにもあんたと顔が近いからだとか思わない。
机の上にある手はノートとシャーペンで字を追っている。
心臓は逃げているかもしれない。


「あたしは元気よ、ラルゴ」
「どうだか。おそらく熱があるよ」

ゆっくりと顔をはずしてテーブル挟んで向かいの椅子から立ち上がったロイドが明らかに熱があるよ、とこぼす。そんなことないわ!と主張すると目も赤いよと髪を撫でられる。途中からわしゃわしゃしだすもんだから、ラルゴ!と叫んでノートで叩こうとしたら体がよろめいた。
あぁ、倒れる。
そう思った頃には意識は混濁している模様。足に力が入らずバランスがとれない。部屋の壁面にぶつかるかと思う前に壁より柔らかいものにぶつかって支えられる。
視界には茶色の洒落たシャツ。
抱き抱えてくれた奴の体はほどよい筋肉で柔らかい。そうして柔らかい唇からも紡がれる言葉は大抵の女子には甘く、あたしにはきつい。

「ほら、熱があるね」
「…」
「さ、とりあえず横になるべきだよエレナ」


私を椅子に座らせ直してから、布団を引き出すロイド。最早勝手知ったる我が家。するすると作業をする。

「大丈夫だって、ラルゴ」
「君は自分の発言の違和感に気付かないくらいフラフラなんだよ。さぁ、休息を」
「まだ、お昼だよ…」
「病人にはそんなこと関係ないよ、ほら」
「…もう。」


頬を膨らませてロイドがひいた布団に横たわると、まるで我が子を見つめるようにあたしを見つめるロイドがいた。
優しい瞳に吸い込まれそう。
だけど、眠気がやってきて、布団に吸い込まれる。
自分の体温で程よく暖かくなったそこは快適空間。睡魔がいつくのも無理はない。

おやすみ、エレナ、と呟いたロイドの声を最後にあたしは睡魔に身を委ねた。

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