▼ あの日の忘れ物 ∵
頬に伝うものを照れくさく思いながら、俺は小さく呟いた。
「……思い出したよ、俺の名前」
探し物は見つかったよ。
涙もろい郵便配達員と、足のない大事な親友へ。
大きな小太郎 より。
終
■ あとがき
こんにちは。霞ひのゆです。「あの日の忘れ物」を読んでくださり、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。不思議な死後の世界の雰囲気、伝われば幸いです。
私は天国や地獄があると信じているわけではありませんが、
死後の世界はあるような気がします。
今回伝えたかったことは、人間の弱さ、人間の強さ、人間の愚かさ。
「寂しい」と口に出せなかった、実は心の弱い主人公、小太郎。
他国に誘拐されても、小さな体で必死に生きようとしていた、もう一人の小太郎。
そしてそんな小太郎を拉致した人の愚かさと弱さ。
必死に仕事を真っ当しようとした、がいこつの郵便配達員の意志の強さ。
人間はたくさんの顔を持っていると思います。優しい顔も、残酷な顔も、ちょっとずつみんなが持っているものだと。
それでも本当に持っている心は温かいものだと信じたい。
成長していこう。ずっとずっと、あの世から迎えの電車が来るまで。
最後に、小さな小太郎と大きい小太郎は同一人物ではありません。
だけれど、まったく関係がない訳でもありません。
きっと彼らは出会うべくして出会った、無二の親友なのです。
どうか、大きい小太郎のように、寂しい人が居なくなりますように。
どうか、小さい小太郎のように、路上で暮らした子供たちが幸せになれますように。
どうか、がいこつ郵便配達員のように、忘れ去られる存在がなくなりますように。
そしてあの電車に乗る者たちが、
どうかどうか幸せでありますように。
♪執筆イメージソング K「over...」
***霞ひのゆ
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