▼ あの日の忘れ物 ∵
一定のリズムを刻んでいる機械音が、心地悪く耳をつく。
聞き覚えのある音だ。たぶん、いつかテレビで見た病院ドラマの中で。
そうか……ここは病院か。
そういえば俺、トラックに轢かれたんだっけ。
そうだ、酒を飲んで勢いで飛び出したんだ。
バカだよなぁ、
素直に寂しいと言えずに、別の何かにぶつけようとした。
バカだよなぁ、
親に反抗して、自分を強く見せようとした。
バカだよなぁ、
俺は、いつだってそうさ……――
「小太郎!」
涙声の母親の悲鳴。
雨漏りの跡のような、白い天井のしみ。
「小太郎!」
低く太い、幼い頃憧れた声。
初めて見た父親の泣き顔。
一定のリズムを刻む機械音。
俺の、弱々しい心臓の音。
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