Short Novel | ナノ


▼ あの日の忘れ物 


 電車が走り出す。


 俺を置いて動き出す。


 あの日、とても心地良いと思ったオレンジ色の夕日は、残された俺を残酷に照らしていた。
 広いホームの上、独りぼっち。
 小太郎と共に降りた時にはあったはずの階段は、どこにもない。
 駅さえも見当たらない。
 歩き出せば線路に落ちる。
 妙に線路が遠くに感じた。


 また電車が来るだろう。

 もしかしたら少年とがいこつを乗せて。

 来るのを待ってみようか。

 あいにく、希望なんていいものは持ち合わせていない。



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