Short Novel | ナノ


▼ あの日の忘れ物 


 小太郎が逝く。



 電車が走り出す。



 奇妙な短い旅の仲間が、引き裂かれていった。



 大きく手を振ってみようか。
 小太郎に見えるだろうか。
 大声で叫んでみようか。
 あんなに小さくなった電車に届くだろうか。
 何もかもが溢れ出てくる。
 いつの間にか忘れていた心ばかり。




「ありがとう」




 ぽつりと呟いた言葉は、小太郎に届いてくれただろうか。


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