▼ あの日の忘れ物 ∵
「ママに会いたい」
「パパと遊びたい」
「ママぁ、ママに会いたいよ」
「ママ――!!」
今までの小太郎は、どこか不思議と大人びすぎていた。
たった一人で異国で死んだは、何もかもを自分の中に押し込んでしまっていたのだろう。
子供らしく大声で泣く小太郎を前に、俺は流れ出すものを押さえ切れなかった。
隣でがいこつが涙を堪えて歯を鳴らす音が、さらに俺を煽った。
小太郎は子供だ。
素直にこうやって親を欲して泣き叫ぶことができる。
俺は、
ここまで何かを欲したことが、あっただろうか。
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