Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

第九章 GOOD NIGHT !!

 おれは、夢を見ていたんだ。胃のもたれそうな夢。
 甘くて、チョコレートみたいで、腹いっぱいで苦しいほど笑い転げそうな夢。

「坊ちゃん、坊ちゃん! 起きてくださいな!」

 朝ってやつは、どうしてこうも憂鬱なんだろう。体は動かないし、脳みそは半分夢の中だし、うんざりするぐらいつまらない現実と、うんざりするぐらい甘ったるい夢との区別が、時々つかなくなったりする。
 その日ももちろん例外じゃなかった。金切り声の女中の悲鳴がしても、墓場でゴーストたちと踊り狂った夢と、かんかん照りの現実との区別が、なかなかつけられなかった。
「坊ちゃん、お父様がお呼びですよ。ほら、起きてくださいな! もう朝食の時間はとっくに過ぎていますよ!」
 わかった。とりあえず、おれはラインダンスを踊るゾンビ軍団から逃げ切れたんだな。
 だけど、昨日は偏屈オヤジの連れで遅くまで会合に駆り出されていたんだから、少しは勘弁してくれよ。
 それに今日は最高の天気じゃないか。おれはまだ……なんだって?
 おれはびっくり箱のように飛び起きた。あんまり勢いよく起きすぎて、おれを揺さぶっていた女中と頭蓋骨の共鳴をおこしたぐらいだ。
 金切り声の女中が、横で痛みに唸っていた。ちくしょうとか言うんじゃねぇよ。目覚まし時計が、鐘を叩く音がする。
「……夢……か」
 乾いたくちびるから、自然とかすれた声が漏れた。
 おれは寝ぐせでもじゃもじゃの頭を触って、両手を目の前に持ってきた。骨ばった大人とふっくらした子供の中間の、成長途中の手。おれの手だ。
 おれはドラキュラの衣装なんかじゃなく、寝間着を着ていた。チェックの生地が、寝ぞうでしわしわになっている。
 寝ぞうなんて……おれが? まさか。どっかの誰かじゃあるまいし……――誰かって、誰だ?
 もじゃもじゃ頭で、大きな目をした――あるいは、小奇麗で、生意気な目をした――……誰だ、それ?


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