Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

「ダージ、プレゼントだよ!」
 気のせいじゃなかったらしい。ロビンが踊るようにブーツの底を叩くと、次にはおれの目の前に覚えのある巨大スプーンが降ってきていた。
 かろうじて受け止めて、おれはいつかと同じ質問を怒鳴ろうとした。だけど、やめといた。これをどうするんだって聞いても、今は答えが決まってる。
 悪いやつらを、こいつでぶちのめすしかないだろ!
 どよめく黒い集団に向かって、おれは力いっぱいスプーンを振り下ろした。ガァン! といい音をたてて、不意打ちにあった黒いやつの頭がい骨を共鳴させてやった。
 アルベールの正体や、ロビンの魔法を知らないやつにとって、まさに今日の光景は、ハロウィンの悪夢に違いない。そしてその悪夢の中に、おれもなんとか駆け込んだんだ。
 ケンカは確実に、黒服が劣勢だった。ハロウィンの仮装をした顔もわからないやつらが、いつの間にか戦闘にくわわって、瞬く間にわらわらと増えていった。
 夢中で黒いやつらをぶちのめしている間に、勝利は確実なものとなっていた。意識のある黒いやつらはちりぢりとなって、ケツをまくって逃げていった。
 残されたおれたちは、誰もが息を切らせて、こらえきれない感情を今にも爆発させたそうに、むずむずと顔を見合わせる。
 そのうち、誰かがこぶしを振りあげて、大声でこう叫んだ。
「ハロウィンに家の外に出ると、善良なゴーストに襲われるぞ! ハッピーハロウィーン!!」
 みんな飛びあがった。歓声が耳に痛いぐらいあちこちでおこり、おれは何度も背中を叩かれて転びそうになった。
 背中がひりひりしたけど、笑いすぎて顔も腹も痛かった。こんなに笑ったの久しぶりだ。自分の声がわからないぐらい、周りで誰かが大騒ぎしてるのも、久しぶりだった。
 そのうちロビンが抱きついてきた。アルベールも。もちろん、アルが自分でおれに抱きつくわけがないけど。
 おれたちはいつの間にかひとまとめにされて、何重もの腕に抱きしめられていた。そばにアランもいた。おれはアランと手を叩き合わせて、アランがおれの頭を撫でてもみくちゃにした。
 かたまりになったハロウィンのゴーストたちは、そうしてしばらく踊ったり歌ったりしていた。
 夢みたいに楽しかった。
 そのうちに、おれたちは、笑い声のうずに吸い込まれていった。



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