Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

 子供のおれは、頭を下げるとほとんど誰にも見つからずに騒動の中を進むことができた。やがて開けたところに出ると、アルベールの姿を見つけた。
 あいつはいつの間にか二丁目の拳銃を手に入れていた。どちらも黒服の男から奪ったんだろう、黒光りするやつだった。
 魔法使いのローブを邪魔そうに肩から後ろへ流し、古風なビラビラのついた白いシャツを揺らす様は、まるで邪悪なバンパイアそのままだ。
 ただ、口から血を流していないから、その恐ろしさは半減していた。半分でも、恐いには恐い。だって、あいつの周りは痛みにうめく人間だらけで、その中心であいつは笑っていたんだから。
 アルベールに近づくか、止めとくかの逃げ腰状態で、黒服の男たちが弧を描いてじりじりとためらっている。
 その時、アルベールがちょっとこっちを見た。あいつの目が、一瞬青く揺れたような気がした。
 次の瞬間、ぱぁん! と破裂するような音が響き、おれの背後で誰かが呻いた。黒服の男が、おれを捕まえようとしていたらしい。
「ちょっと。そんなところにいると、撃つよ」
 銃をくるりと回し、アルベールはそっけなく言った。おれはイラッとしたが、この状態のあいつにイラッとできるなんて、おれぐらいだろうなと思った。
 こっちに来いと指図されたため、おれはためらいがちに黒服の軍団からアルベールに向かって駆けだした。それが合図になって敵が押しかけてきやしないかと思ったけど、それはなかった。
「ロビンは?」
「あちこち、ちょろちょろしてるよ。しょちゅう変な魔法使ってる。今そばに寄ると、くさいよ」
 くさいって。なんか想像つくけど、緊張感のないやつだな……ほんと。
 アルベールと背中合わせに立つと、向こうにアランの姿を見つけた。さっきお菓子をくれた、やさしい顔のおっさん、ランスって人もいる。
 あっちは殴りあいのケンカっていうより、不思議な力を使ったケンカのようだった。だって、アランのいるあたりから氷の柱が突きあげたり、水しぶきがあがったりするんだ。
「ほら、いた」
 その時、アルベールが呟いて、おれを肩で小突いた。振り返ると、群衆の真ん中がパッと光って、ロビンが飛びあがった。
 もじゃもじゃ頭の横を、何発もの銃弾がかすめていく。しかしロビンはにやにやとおっさんたちを見下ろすと、空中でブーツを止め、バレリーナみたいにくるっとまわって見せた。
「あれはなんという能力だ?」「No,3に近いものに違いない」「捕まえるぞ!」という野太い声があがっている。だけど、おれは知ってる。あれはただの飛び足呪文だ。
 飛び交う凶器と銃弾を、ひょいひょいと跳ねて避けながら、ロビンがちらっとおれを見たような気がした。


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