Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

第八章 TAKE A HIKE !!

 だって、なにもできることがないんだ。アランはどうだか知らないが、あいつら二人は、おれの友達……だけど、おれとはぜんぜん違うんだ。
 ふざけあって笑ったり、怒ったりはできるけど、戦士みたいに共に戦うことはできない。
 それが、おれの世界と、あいつらの世界の違いだった。そして、この世界と、おれの世界との違いだ。
 そういうのと比べれば、おれの世界は平和だった。くだらなくて、つまらなくて、平凡で、毎日どこかでバカ笑いが響く幸せな世界。
 ふと横を見ると、廃墟に立てかけてある“崩れる危険性あり”の看板が目に入った。看板には、長い棒きれがついている。
 おれは二人の衣装を抱きしめた。心臓がドキドキする。数十メートル先では、生きるか死ぬかってほどの、乱闘騒ぎが続いている。
 今、おれにできることは、ほとんどない。だけど、友達の助けになるぐらいの力、おれにだってあるはずだろ?
 おれは決心した。“危険性あり”の看板を倒して棒きれを引き抜くと、残った釘も抜きとった。さすがに、これで殴られたら痛いしさ。
 何度かクリケットの練習みたいに振り回してから、おれは棒きれに力を入れた。ドラキュラ公のマントも邪魔だから、脱いだ。
 おれは息を止めて、駆けだした。悲鳴と雄たけびが近くに聞こえる。黒服が目に入り、次に見たことのある金髪が目に入った。
 あ、アンドリューだ。背丈が同じほどの黒服の男に、蹴りを入れて、さらに片手を広げてなにかしている。
 その手が触れる前に標的の人間がぶっとんだことに、おれは驚いた。しかし次の瞬間、アンドリューの死角から蹴りを入れられた男が起き上ったため、おれは慌てて棒きれを投げた。
 それは信じられないぐらい、ばっちり命中した。おれの棒きれはみんなの頭上を飛んで、手を振り上げた男のサングラスを粉々にした。
 それに気づき、アンドリューがとどめの一発をくらわせた。そしておれを見て、にやっと笑った。
「よくやった!」
 おれはなんだか嬉しくなって、いい意味で背筋がぞっとするのを感じた。
 おれは中に突っ込んでいって、とりあえず身近な戦闘の手助けをすることにした。アンドリューが殴りたがっている奴に抱きついて逃げられなくしたり、ジャック・オー・ランタンをかぶったおっさんを締めあげているやつのひざを後ろからカクッとしてやったりした。
 まるで、本当にいたずらをしているみたいだった。自然とあの呪文がこみ上げてくる。お菓子くれなきゃ、いたずらするぞ!


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テーマ「人外ファンタジー」
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