Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

 ほうきのやろうはばたばた柄を暴れさせておれを振り落とそうとしていたが、落とすより先にロビンがぴしゃりと叩いて出発させた。ほうきは思ったよりスピードを出して、周りの景色をびゅんびゅん追い越していく。
 やがて大きな壁が一面に見えたかと思うと、ぽつんとひとつ開いた穴のようなものの中に滑り込んだ。灰色でつめたそうな壁がしばらく続いたが、急に突き当りで止まったかと思うと、いつの間にか知らない部屋にポンと飛び出していた。
 一瞬見たそれは、廃墟のようだった。もう使われていない家だ。しかしまじまじと観察する前に、ロビンが眩しい世界に飛び出した。
 なんだ、これは。今度は急に昼間になったみたいだ。目のくらむような日光を浴びて、おれは一瞬また夢と現実の境がわからなくなったんだと思った。
 やがて、前方でわぁわぁと騒がしい音が聞こえ始めた。騒がしいというより、物騒と言ったほうがいいかもしれない。飛び交うのは、罵声や歓声だけでなく、明らかな銃声や叫び声も混ざっていた。
「そんじゃ、いくよ!」
 ロビンの合図を最後に、ほうきは跡形もなく姿を消した。おれたちは道に投げ出され、おれは転がったけど、ロビンはよろけただけ、アルベールは難なく着地して、なんか妙に不公平な感じがした。
 ロビンが手近な廃墟の壁に魔法陣を描き、そこから使いやすそうな短剣を二本取り出した。意気揚揚とジャケットを脱いだかと思うと、恐れる様子も見せずに大ゲンカを繰り広げる集団に突っ込んでいった。
 おれは予想以上の騒動に、腰をぬかしかけていた。見たところ、どうやらぼろをまとった数人をめぐり、仮装したアランの街の住人と、みんな同じような恰好をした黒スーツの男たちがやりあっているようだ。
 その中に、アランを見つけた。いつの間に参加していたんだろうということにも驚いたが、あいつの目が赤く光ったような気がして、おれは一瞬ぞっとした。
 ロビンの姿はもう見えない。あいつのことだから、魔法を駆使して生き残ってくれると思うけど。
 一方アルベールは、おれの前に立って、遠くから騒ぎを眺めていた。片足をコツコツと鳴らして、なんとなく楽しそうだ。
 行かなくていいのか? と、バカみたいなことを話しかけそうになった。だが、そんなこと心配するほうが無駄だった。見えない何かに突き飛ばされた黒服の男がこっちによろめいてきた時、獲物を狙ったヘビのように、そいつは動いた。
 自分の背丈の倍もありそうな体格のいい男を捕まえ、腕をひねって鼻にパンチをくらわした。いてっ。一瞬の出来事だったが、思わず目をそむけずにはいられなかった。
 悶絶する男を気にする様子もなく、アルベールは男の腰からさっさと拳銃を引き抜くと、銃の様子を確かめて何発か廃墟に試し打ちした。使えそうだな、と思ったのか、こっちに向かってニコッとすると、ようやくケンカに入っていった。
 うわ、あいつ、笑ってた。いつも不気味なやつだと思ってはいたけど、あいつやっぱり、こわい。
 おれの前に残されたのは、フランケンシュタインのジャケットと、魔法使いのぼうしだけ。おれはとりあえず立ち上がり、その衣装だけ持ってさっさと端のほうに逃げた。



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