Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

「僕らも行くよ、アラン!」
「な……なに言ってんだよ!」
 とんでもないことを言い出すロビンに、おれは突っかかっていった。額をぶつけて頭の中を正そうと試みたが、痛かったのはおれだけで、ロビンはにやぁっといやな笑みを見せただけだった。
「ハッピーハロウィーン!」
 おれに背を向けるとき、やつがそう囁いたのをおれは聞き逃さなかった。まさか、あいつが本当にしたいことって、トリック・オア・トリートじゃなくて、こっちのことか?
「だ、ダメだ、そんなこと!」
 もちろんアランは反対した。慌ててロビンにジャケットをかぶせ、足元に菓子をばらまいた。
「君たちはただの子供だ! ここの世界では、守られるべき人間なんだから!」
「あのね、僕は魔法使いなんだよ! 魔法使いは人のために魔法を使い、悪を倒し正義を貫くんだ。僕の師匠が教えてくれた」
 ロビンはさっと振り向くと、もっともらしくカッコつけて言った。その言葉に、アランははっとしたようだった。ロビンを止めようとしていた手が、すっと脇に下がる。
 おいおいおい、うそだろ、やめてくれよ。厄介事に首は突っ込みたくないんだ。とくに、こういう危険で非現実的そうな場合、首を突っ込んでいいようになった試しがない。
「君はどうなの、アル?」
 ロビンがジャケットのポケットを探りながら、隣で微動だにせず突っ立っていたアルベールを小突いた。
 生意気そうな青みがかった目が、大きなぼうしのかげで揺れる。
「……別にいいけど、報酬は?」
「ハリソン家のチョコバー三本でどう?」
「のった」
 パチン、と手を叩き合わせ、魔法使いとフランケンシュタインは契約を交わした。……えっ、おれは?
 そうこうしているうちに、ついに避難命令の放送が流れた。わんわんと反響する悲鳴じみた女性の声に押され、おれたちはわらわらとセンターの出口をくぐっていった。
 他にどうすることもできなかった。もとの世界への道を作るやつは厄介事に首を突っ込む気満々だし、そいつを唯一締めあげられそうなやつもチョコバー三本で買われている。
 おれはなにをすればいい? 頭の中をぐるぐる回しながら唯一頼れそうなアランを見上げたが、アランはどっかで危険にさらされている誰かのことで頭がいっぱいのようだった。
「本当に行く気なんだね……だけど、ぼくから離れないことを約束して。必ずぼくが守るから」
「そんなのご無用! だって僕は最強の魔法使いで、こっちは最強の暗殺者で、そんでそっちは……最強のおせっかいやきなんだからね!」
 ロビンはそう言って、足元に簡単な魔法陣を描いた。それがパッと光ったかと思うと、まるで地面にずっと埋まってたみたいに、でかいほうきがずるずると取りだされた。
 ロビンがさっとそれに飛び乗り、アルベールも続いた。おれはどうしていいのかわからなかったが、いつの間にかアランが隣りから消えたから、おれも仕方なく手を借りてほうきに乗っかった。


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