Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

 ロビンは早速腕まくりをして、コンコン、と扉を開いた。
「トリック、オア、トリート!」
 バカみたいに陽気な声に、またすぐに扉は開かれた。次に姿を現したこの世界の住人は、おれたちより少し上ぐらいの歳の、ひょろりと背の高い青年だった。
 真っ直ぐな黒髪の下から、人の良さそうな緑色の目が見える。ロビンはにっこりと微笑んでみせたが、おれが見る限り、こちらも「知り合い」ではなさそうだ。
「えっと……ごめんなさい、誰だったっけ……。てっきりセイかと思ったんだけど……まさか仮装じゃないよね、その顔まで?」
「アランって、君でしょ?」
 すまなそうに頬をかく青年を遮り、ロビンが身を乗り出した。色の違う両の目に、青年はぎょっとしたようだった。無理もない。だって、普通の世界にはこんな目の色した奴いないもんな。おれだって最初びびった。
 しかし、青年の驚きはそれだけではなかったようだ。青年は急に険しい表情になると、身構えるようにこぶしを握った。
「……公司……じゃ、ないよね?」
 その声のトーンは、明らかに疑いに嫌悪が混ざっていた。なんか、ヤバい雰囲気なんじゃ……。
「あ、あの、さ。おれたち……」
「僕はね、魔法使いなんだよ!」
 なんとか説明しようとしたおれを遮り、ロビンが飛び出した。アランは唖然としている。
 当たり前だ。魔法使いと名乗り出たのはフランケンシュタインで、魔法使いのほうはむっつりと下を向いているんだ。あぁ、おれまで頭が混乱してきた。
「違うんだ! あの、この恰好はハロウィンの仮装なんだ。だけど、こいつは本当は魔法使いで、おれは何でもない、普通の人間だけど、でも、こいつのせいで別の世界から連れてこられてさ。だから、ちょっと変わって……いや、俺は変人なんかじゃないんだけど!」
 おろおろと弁解しているうちに、どんどん頭がこんがらがってきた。
 そんなおれを見て、アルベールはあざ笑うように帽子の下でニヤニヤしている。ちっ、ちくしょう……。
「別の、世界?」
 こんがらがった弁解は、なんとか青年の警戒を解くには役立ってくれたようだ。
 アランはこぶしを下ろすと、とりあえずおれたちを部屋の中へ入れてくれた。部屋の中はきれいに片付いてはいるけれど、ずいぶん狭くて、さりげないハロウィンの飾りはあちこちに見つけられた。
 アラン以外に人はいない。小さなテーブルの上にバスケットに入ったお菓子が置かれていて、いついたずらオバケがやってきてもいいようになっている。
 部屋の半分を占める大きなベッドを見つけて、ロビンは盛大にダイブした。初対面の人の家でそんなことをしていいのかとも思ったが、ハロウィンの特権として見逃しておいた。
 アルベールはさっさと部屋の奥にソファを見つけ、そこにひとりで陣取っている。おれはというと、自分も何かすべきなのかとおろおろしてしまったが、結局アランと目を合わせたりそらしたりの連続で、居心地が悪かった。



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