Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

 おれが観察しているうちに、アルベールがもうひとつの扉の前に立った。すると、また扉がすっと開き、さらに中へ進ませる。
 この奥にも部屋があるんだ。今度はあまり怖がったりせず、ロビンに続いておれもその扉を難なくくぐり抜けた。
 その先に広がった光景は、見たことのないもののオンパレードだった。大勢の人々がわあわあと活気のある声をかわしては、頭上何階にもなる部屋や廊下を行ったり来たり。天井に一番近い階のほうは、もう人がちっぽけではっきりと見えない。
 なんだ、こりゃ……。思わず、ぽかんと口を開いて唖然としてしまった。これは何だ? 劇場か? オペラハウスか?
「トリック・オア・トリート! お姉さん」
 そうこうしているうちに、ロビンはさっさと次の場所に向かっていた。
 そこは受付のようなところだと、おれはすぐに気づいた。なにしろ、でかでかとした文字で「インフォメーション」と書かれた看板があるからな。
 受付の女性は、くすくすと笑ってキャンディーの入った大皿を差し出した。
 ロビンはもちろんがっぽり袋に入れ、アルベールもそれなりに受け取る。外見はやたら綺麗なやつだから、受付の女性の心はがっちりつかんだようだった。
 おれはというと、なかなか受付に近づけずにうろうろしていると、受付の女性がわざわざ立っておれの袋にキャンディーをどっさり入れてくれた。小さな子どもみたいで恥ずかしいけど、自らもらいに行くのも……まぁ、どっちにしろ恥ずかしい。
「あのね、お姉さん。ちょっとお尋ねしたいんだけど、060号室の住人は今家にいるかな?」
 ロビンはありったけの愛嬌をふりまきながら、カウンターの女性にそう問いかけていた。
 懐っこくぶりっこの少年とクールな美少年に囲まれ、受付の女性はすっかり舞い上がっていたようだ。今にも目からハートを飛ばしそうになりながら、かろうじて答えてくれた。
「060……あぁ、彼の家ね。今は中にいるわ。そろそろセイがエリックとラルフを引き連れて回りだす頃だから、それに備えてお菓子でも用意してるんじゃないかしら」
 その答えに、ロビンは声をあげずにおれたちに目くばせした。ただし、こぶしを振り上げる「よっしゃ!」という仕草は忘れずに。
「ありがと、お姉さん。いいハロウィンをね!」
 おれたちは、再びロビンが行くままに後を追った。受付の横の階段を上り、どうやら、さっき少し会話に出た「060号室の住人」とやらが、本当のロビンの目的のようだ。
 やれやれ、これでようやく解放される。このバカげた衣装からも、おちゃらけたおっぺけぺー頭の魔法使いからも、無口でつまらねぇ……なんかこう言うとムカつくけど……美少年からも。
 060号室は、階段を上ってすぐのところにあった。青い扉に、金文字で「060」と書かれている。


prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -