Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

第五章 WHERE IS HE ??

 規則正しく並んだ街並みを過ぎると、どこよりも大きな建物が見えてきた。つるりと撫でられたあの曲線は、一体どうやって作っているのだろう? 見たこともない、銀色の建物だった。
 あんな高いところまではしごがかかるのかと思うほど背が高いが、外観のあちこちにハロウィンの飾りつけがしてある。少し、クリスマスを先取りしすぎているような感じもした。
 入口らしきガラスの扉には、無機質な文字で“センター”と書かれていた。見ていると、きゅうにその扉が勝手に開いて“センター”の文字が割れ、中から人が出てくるもんだから、びっくりした。
 しかしロビンとアルベールは、そんなの当然、みたいな顔をして、そこを目指して進んでいく。
 これはどちらかというと、アルベールのほうが馴染みのあるもののようだ。ロビンは好奇心丸出しで、「アレは例のアレだよね!」なんてアルベールに突っかかっている。
 なんだか、こうして見ると、本当に異世界に来たんだな、と実感する。しかも、おれたち三人だって、それぞれの世界を持っているという、奇妙な状態でだ。
 ここは、アルベールが先頭を切って進み出た。すると、センターの文字の入った扉は手で触れることなくすっと横に退け、人を中へと促す。びっくりした。アルまで魔法が使えるのかと思った。
 アルベールがいったん中に入ってから、ロビンは扉が勝手に閉まるのを待って、もう一度自分が手を触れずに扉を開けた。それをきゃっきゃっと楽しそうにはしゃぎながら通り、おれにも来いよと手を振っている。
 冗談だろ。おれは魔法なんか使えないんだけどな……あの変人伯爵なら、なんとかなるかもしれないけど。
 おれはハロウィンバッグをぎゅっと握りしめ、緊張を飲み込んだ。一度深く呼吸をして、恐る恐る扉に向かって歩みだす。
 おれだけ中に入れなかったらどうしよう? そんな不安を、ガラス越しに見える中の二人の「なんてことない」という表情がさらにあおった。
 しかし、扉の前に立ったとたん、扉は素直にすっと横にどいて道を開けた。おれはぽかんと扉を見つめていたが、しばらくしたら扉が閉まりかけたため、おれは慌てて中に駆け込んだ。
 それでも、扉は決しておれを挟まなかった。おれが通り過ぎた時、扉はまた横にどいてくれたのだ。
 おれにも魔法が使えたのかな? ふと、もしそうだったらどうしよう、と楽しそうな考えが浮かんだ。
 ……いや、待てよ。おれは非現実的なことが嫌いなはずだ。異世界に飛び込んでる時点で、説得力のない話だけど。
「遅いよ」
 一足もふた足も先に入って待っていたアルベールが、ぼそっと文句を言う。
「あ……うん、ごめん」
 おれは素直に謝り、中を見回した。
 シンプルな小部屋だった。ガラス張りで、外の街の様子が見える。掲示板がそばにあったり、植物の鉢植えがいくつか、これもまたクリスマス先取りに飾られていた。


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