Short Novel | ナノ


▼ !!! NIGHTMARE OF HALLOWEEN !!! 

第四章 TRICK OR TREAT !!

 おれは呼吸を整えて、見たことのない街並みを見回した。
「とりあえず……行くなら、さっさといただいて帰ろうぜ。こんなとこ」
「で……結局、ここはどこなの?」
 魔法使いのぼうしをかぶり直しながら、ようやくアルベールが協力的なことを言った。よかった、こいつ、かろうじて人間だったみたいだ。
 真っ赤な頬をさすりながら、ロビンが不満げに答える。
「ちょっと知り合いの世界だよー……別に危ないとこじゃないもん」
 そう言って、ロビンは歩きだした。ふらふらとあちこちを眺めないから、本当に目的があるように見えた。それならまだいい。
 その知り合いとやらから菓子をふんだくれば、ロビンは帰り道を作ってくれるんだろうな。だったらありったけあいつの口に詰め込んでやろう。鼻もつまんでやる。
 建物の並ぶ通りに入っていくと、あちこちがハロウィン仕様に飾られた家々をよく見ることができた。まぶしい街灯もジャック・オー・ランタンがかぶせられ、陽気にニヤニヤしている。
 ぽつりぽつりと、この世界の住人の姿も見えてきた。お菓子の入ったかごを持って、魔女の仮装をした婦人はよく見られる。走り回る子供たちも、思い思いの手作りの仮装を楽しんでいた。
 オペラ座の怪人みたいな仮面をつけた男とすれ違った時、シルクハットを上げて挨拶もされた。おれたちはぼうしをかぶっていなかったけど、アルベールだけが小首をかしげたように見えた。
 どうやらもう、トリック・オア・トリートの声は飛び交っているようだ。やっぱり、ここの世界ではもう夜か、夕暮れなのかな。
 やがて、戸口に花とコウモリの切り絵を飾った家にたどり着いた。その戸口に立ってロビンがニヤッとしたから、ここが目的地なんだろうと思った。
 ロビンは頭のネジを直して(ついでに常識も直してくれ)、グリーンの扉を叩いた。扉は軽い木の音がした。
「トリック、オア、トリート!」
 元気のいい呪文を合図に、扉が開いた。家から出てきたのは、やさしそうなおばさんだった。茶髪を頭の上にひっつめて、世話好きそうな目をきらきらさせている。
「ハッピーハロウィーン! あらあら、見ない顔ね。最近降りてきたのかしら?」
 お菓子も出されてないのに、ロビンはさっさと手を突き出していた。
 嬉しそうにニコニコ笑顔を向けてくる坊やに、おばさんは楽しそうに笑う。


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