▼ 背中と背中 ∵
――書いてやる。
書いてやろうじゃないか。
天詩があれほど真剣になって書いた物語の最後だ。
あいつは俺に任せてくれた。
背中友達の精一杯の夢を
俺が完結させる。
実体のない俺は、物を掴むことができない。
だけれど、すべてを――天詩の思いと、この与えられた力すべてを込めて、ペンを握った。
渾身の力で込めて書いた、最後の一行。
薄れて、とても汚く、すぐに読めるような字ではないけれど。
“少年は、それからもずっと、幸せに暮らした。”
天詩、見ろよ。
「おめでとう、ハッピーエンドだ」
汗だくになった俺は、テンガロンハットをかぶり直し、星空の映る窓から飛び降りた。
空の上に続く、電車の汽笛が鳴るまで
少年は、幸せに暮らした。
そして、
死神は生まれ変わる……――
電車の汽笛と共に、聞こえる。
雲の上から響き渡る
儚く、偉大な、天の詩。
〜 End 〜
■ あとがき
背中と背中を読んでくださって、ありがとうございます。作者の霞ひのゆですm(__)m
今回のお話は、ちょうど初めての大きなスランプ時に書き上げたもので、実は天詩が小説を書くシーンでは、すらすら書きたいという私の願望が……。
それはそうとして、帽子をかぶった死神というのは、この作品を書くちょっと前に書いた、「帽子屋」という作品の影響だったりします。
あの世行き電車など、「あの日の忘れ物」もちょっと関係があったりして。
こんなふうに、私の作品には、作品同士がひっそりリンクしているところがちょくちょくあります。
探せとまでは言いませんが、読んでいて「おっ」と思ってもらえれば嬉しいです。
不器用でツンデレな死神のキョーイチと、マイペースな天詩の友情。
きっとこれからも、彼らは背中合わせの友達であって欲しいです。
生まれ変わったら、みんなで一緒にでっかい夢を語ろうぜ!
♪執筆イメージソング ケツメイシ「涙」
***霞ひのゆ
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