Short Novel | ナノ


▼ 背中と背中 

 なんて、言っていた俺達だったが、
 結局は、生ぬるく気持ち悪い風を浴びながら、少しだけ語り合った。
 語り合うといっても、ふざけ半分の将来の夢や、むかつく教師の愚痴を言うわけでもない。
 ほとんど、天詩からの質問だらけだった。
 必ず、「ねぇねぇ」から始まって、「へぇ! そうなんだ」で終わる。

 死んだときどう思った?
 幽霊とかオバケって居る?
 三途の川ってある?
 死神がいるなら、悪魔とかも居る?

 そのからっぽそうな頭のどこから、それだけの質問は出てくるんだ。
 少しは背中友達を思いやれ。
 俺は太陽がさんさんと当たる床へ寝転び、不機嫌顔で短く答える。

 死んだーって思った。
 居るよ。俺がそんなもんじゃないか。
 そんなものない。夢か見間違いじゃないか。
 ……ノーコメント。

 夢のない俺の返事にも、天詩は、「へえ! そうなんだ」を繰り返した。
 指折り数えているその質問、もういくつになったんだよ。
 そして膨大な数の質問が一段楽した頃、天詩もようやく口を閉じ、パッタリとその場に寝転んできた。
 いつの間にか太陽が雲に隠れ、雲の合間から少しの光を地に降らす。
 俺たちはその様子をじっと見つめながら、ほぼ同時に小さくため息を漏らした。

「僕、いつ死ぬ?」

 そしてまた、天詩からの突然の質問。

「……なるべく早く」
 俺は無表情のまま、呟くように答えた。
 早くしないと、上司にサボりだって怒られるし、スタンにもグチグチ嫌味言われるし、それに、
「あの世行きの電車が待ってるぜ」
「へえ!」
 俺の発言に、また天詩が好奇心旺盛な声をあげ、飛び起きた。


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