はんぶんこ


風介はいつだって可愛いけど、俺に抱っこされて揺さぶられてる時の風介はもう叫びだしたくなるくらい可愛い。すっごく可愛い。この瞬間風介は俺の可愛いものランキングの頂点に立つ。いや、この瞬間が終わったって、ずっと、ずっと

風介、風介
この時、俺の世界は風介でいっぱいになる。風介だけになる。でも風介はどうなんだろう。俺はまだ風介のこと全然知らない。昔からずっと一緒にいるのに、まだまだ知らないことばかりだ。100パーセントで言ったら、多分40…45パーセントも知らない。自分で言っててちょっと悲しくなってきた。つまり俺はこんなにだいすきな風介のこと、半分も知らないんだ。

歳は俺と同じ。アイスがすき。不器用で、我が道をいくタイプ。指が細くて綺麗。睫毛がびっくりするくらい長い。熱いのが嫌い。それから、それから、

「っ、はるや」
「なんだよ?」

何考えてんだよばか、だって。ばかってひどいなあ。まあ賢くはないけどさ。俺は動きを止めて、それから綺麗に朱に染まった耳にキスをした。風介の白い肌が朱に染まるのって、なんだかすごくえろい。次は、吸いすぎて真っ赤になった唇にキスをする。そのたった数秒が、なんだかスローモーションみたいだった。

「風介のこと」
「は?」
「何考えていたって、聞いたろ?おまえのことだよ」
「あ、そ」

素っ気ない返事に心底どうでも良さそうな顔。でも表情はとろんとしていて、本当に可愛い。風介は可愛い。かわいいかわいい、すき

「風介、すき」
「あ、そ…っ」

ぐ、と腰の動きを再開すると、風介は泣きそうな声でまた、はるや、って言った。

風介は表情が豊かな方じゃない。何を考えてるのかわからないことだって少なくない。すきとか言ってるわりに、まだまだだなって自分で勝手に凹むことだって少なくない。けど最近は、そんな些細な表情の違いがわかるようになってきた。これは、最近の俺の自慢だったりする。例えばそれは表情だったり、声だったり、仕草だったり。風介のちょっとした色々、それを発見出来るのは嬉しい。単純にすき、愛しい、と思った。
白くなるほどシーツを掴んでる指先を、そっと外して自分のと絡める。綺麗に切りそろえられた爪にキスをすると、真っ赤な顔で睨まれた。うわ、涙目の破壊力、半端ない。

ばかはるや、そうやってまたまた名前を呼ばれた。苦しい。すき、すきだ、苦しい。
なあ風介、今何考えてる?な、わかるよ。そしてそれはきっと、多分、あってる。俺のこと。ただわからないのは、俺と同じで苦しいのかな、ってことで。気になるのもそこで。そうだといいな。俺のこの気持ちの、十分の一でも、百分の一でもいいから。


「すき」

って、あれ。今のはどっちが言ったんだっけ?




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