42日目


 俺とは対照的で、明るくていつも人を引き寄せるようなそんな奴だった。



 その日は夜中から朝方にかけて強い雨が降り出した。窓に当たる雨の音で目を覚ました俺は、昨日脱ぎ散らかしたまま床に無造作に転がっている衣服の中から自分のシャツを拾いあげ袖を通した。シャツ一枚だけを羽織い裸足のままよろよろと洗面台に向かう。静かな一室に、ぺたぺたと冷たい音が響いた。

口の中が切れていた所為で、少し水が染みた。そのまま口を濯ぎ髪を一つに結ってから顔を洗う。

時刻を確認し、衣服を完全に身に纏う。この部屋の主は身じろぎ一つせずにぐっすりと眠っている。それを確認してから、ここへ来る時に持ってきた中身なんてないに等しい薄っぺらい鞄を手に持ち足早に家を後にした。

そういえば傘を持っていなかったと、随分濡れてしまってから気付く。まあ自分の家はここから歩いて15分の距離だし、どうせ帰ってからすぐにシャワーを浴びるから別に構わないだろう。メールもその後ですればいい。




 学校で会ったのは本当に久しぶりだった。お互いあまり学校に来ていない所為もあって、連絡を取り合い約束でもしない限り偶然ばったり会うなんてことは皆無に等しい。その代わり、学校の外で会ったのはつい一昨日の事だ。

そのまま他愛ない話をして、学校をサボっていつもの流れで相手の家に行った。一人暮らしな為気を使う必要もなく、何度も訪れている場所だ。それに今更恥ずかしがるような仲でもない。
そうして若い男女が集まればやることは一つだ。まあこの場合男女ではないが、そこは付き合っている者同士。流れは決まっている。断る理由も、拒む意志もなかった。


良く笑う。優しい。友達が多くて、男らしい。俺とは対照的な奴だ。だからこそそんな所に憧れていた。

ただあの声を、自分の名を呼び愛を囁く声を、どこか他人事のように受け止めるようになったのはいつからだっただろう。

帰路はまだまだ長い。太陽も昇らないようなどんよりと濁った空の日だった。


(42日目)
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